新・週刊フジテレビ批評

The 批評対談

大ヒット脚本家のドラマ放談2018

DATE : 2018.03.31(土)

CATEGORIES : | The 批評対談 | ドラマ |



テレビを彩る数々の名作ドラマを生み出してきた、脚本家たち。2年前に続き、大ヒットドラマを担当してきた3人の脚本家たちが再び集結。
「リーガルハイ」や4月期の新ドラマ「コンフィデンスマンJP」の古沢良太氏。「美女か野獣」やNHK「わろてんか」の吉田智子氏。そして、TBS「半沢直樹」「陸王」の八津弘幸氏。大ヒットを生んできた3人の脚本家は、今のドラマをどう見ているのか。ドラマ解説者の木村隆志が斬り込む。

まず、木村氏は「2年前の対談はホントに面白かった。そこから2年、さらに名作が生まれているので、まずそこを聞きたい。さらに、お互いに抱いている思いを知りたい」と対談のポイントを整理。
すると、八津氏は前回の対談のあと吉田氏のツイッターをフォローしたが吉田氏は2年間フォローしてくれず、今回の対談直前にようやくフォローになったとエピソードを披露。すると吉田氏は、「古沢氏のツイッターは2年前にフォローしていたんですけど」と明かし、苦笑い。八津氏は「二人はフォロワーが8000人とか2万人とかいるけどぼくは63人」と自虐的な笑いを誘った。

この2年を振り返った八津氏は、「『陸王』(2017年10月期TBSドラマ)を評価していただいて思い出の深い作品にはなった。一方で、『またそのテイストか』という話も聞く。ドラマ界の水戸黄門にすればいいやと思ったりもする。何かしら新しいものをやろうとしていて自分のなかでは消化できた」とした。
すると木村氏は、「原作の内容を使い果たしてしまい八津氏がほぼ脚色したと聞いている。これをもっと言ったほうがいいですよ!」と。そう言われた八津氏は「恐縮です」と照れた。
八津氏は現在、4月期のドラマ「家政夫のミタゾノ」(テレビ朝日)続編を執筆中。そのTシャツと陸王のパーカーを着て、対談に参加。実は、事前に古沢氏が「コンフィデンスマンJP」のパーカーを着てくるとの情報をキャッチし、わざわざ着てきたという。

吉田氏はNHK「わろてんか」(2017年10月~2018年3月)を執筆。書き始めてから他の仕事は一切できなかったという。驚いたのは反響の大きさ。なにより親戚が喜んだとか。木村氏は「(朝ドラは)日常のなかに入ってますから」と枠の持つ力を分析。すると、吉田氏は「半年間、役者の成長をみていく。視聴者も自分の娘が成長していくのを見ていくような感覚で見ていける」と応えた。

古沢氏は4月期「コンフィデンスマンJP」の執筆はすでに終了しているという。というのも、執筆をスタートさせたのは2017年はじめと1年以上も前。木村氏は「実績がすごいし、面白いものができる。(時間をかけて)クォリティを高めようという信頼関係がないとできない」と驚いた様子。古沢氏は「ゼロから立ち上げているので、早くから相談しながらスタート時期を設定してもらった」と振り返った。八津氏は「うらやましいの一言に尽きる」。第1話を読んだという木村氏は「すごいですよ。めちゃくちゃ飛ばしてますから」と期待を寄せた。
タイトル「コンフィデンスマンJP」の「JP」について、古沢氏によると2つの意味があるという。一つは、画数がよくなるとのこと。そしてもう一つは「ジャパン」の略。今回、同じ脚本で中国では「コンフィデンスマンCN」、韓国では「コンフィデンスマンKR」が同時制作される。ドラマ解説者の木村氏をして「聞いたことがない」という試み。古沢氏自身も「今からワクワクしてます」とした。

前回の対談ではそれぞれ今後の意気込みを書いてもらった。
・八津氏「オリジナルで“爪あと"を残せるような作品を作りたい」。
・吉田氏「守りに入らないで何か新しいものを生み出したい」
・古沢氏「世界に通用するような日本初のドラマを作りたい」
この2年前の“目標"を見た3人の人気脚本家は・・・

八津氏は「(現在執筆中の)『家政夫のミタゾノ』は一見オリジナルではないタイトルに見えるが、オリジナル作品。(陸王など)TBSのドラマとはまた違ったアプローチで書くことができた」と2年後の自分を前向きに評価。木村氏は「家政夫のミタゾノは(オリジナルで)続編ということで爪あとも残っている。辛口の吉田潮さんが『陸王』はけなしたけどミタゾノはめちゃめちゃ面白いと言っていた」と持ち上げた。
吉田氏は「朝ドラは挑戦だったので自分としてはやったなという気持ち。明治からの芸の歴史を追うという作業がとても楽しかった。ただ終盤は体力的にきつかった」と振り返った。朝ドラは1話15分で1週90分、民放だとスペシャルドラマ26回分に相当する。これを聞いた八津氏は「(朝ドラを担当することは)ひるみますね。皆さんに迷惑をかけると思う」と苦笑い。古沢氏は「やりたいですけどね。(通常のドラマだと)せっかく作り上げた人物が、愛着がわいたころにお別れになってしまう」と朝ドラの魅力を語った。吉田氏によると、「(朝ドラの)役者さんは役者として成長するだけでなく家族になっていく。だから後半は泣く芝居が本物の涙になった」と撮影が長期にわたる朝ドラならではの世界を語った。
2年前「世界に通用するような日本初のドラマを作りたい」と目標を掲げた古沢氏は「いろいろそういうチャンスをいただいている。フジテレビのプロデューサーや国際局に熱意のある方がいて、作品や人材をアジアに広めていきながら新しい時代を作っていこうとしている」とした。そのなかで誕生したのが「コンフィデンスマンJP」。古沢氏は「日本代表みたいな感じで責任を感じているが新しい冒険に出るみたいにワクワクしている」と目を輝かせた。木村氏は「主演の俳優目当てでドラマを見る人が多いが、脚本家目当てで見る人も海外では増えてきている」と日本のドラマが取り巻く現状を分析。その一人が古沢氏だとした。

つづいて、それぞれが聞いてみたい質問を用意してもらった。
まず八津氏は「吉田さんへ。どうやったら朝ドラを書かせてもらえるんですか(僕の事務所からの質問)」。この質問に吉田氏は「NHKは(NHKでの)実績がないとできない」との回答。八津氏は「(NHKの実績は)ちょっとだけ。これからちょっとずつ爪あとを残していきたい」と笑いを誘った。
次に古沢氏への質問「キャラクターってどう作りますか?」。
古沢氏は「大きなスケッチブックにこんな感じの人っていう絵を描いたり、セリフを思いつくまま書いたり、こんなシーンがあるとかダイジェスト版をどんどん作っていく」とキャラクター作りの一端を教えてくれた。履歴書はほとんど作らないという。さらに、よくやることとして「ドラマ史上最も・・・」という枕をつけてのキャラクター作りをあげた。「ドラマ史上最も性格の悪い主人公」として作り上げたのが人気ドラマ「リーガルハイ」で堺雅人が演じた古美門研介。同じように、最新作では「ドラマ史上最も無軌道な主人公」として、長澤まさみさんのキャラクターを考えているという。八津氏は「何か書くもの・・・」とメモする素振りを見せつつ「たしかに、拠り所にすると考えやすいですね」感心していた。
吉田氏からは二人への質問。「原作モノ、増えすぎですよね!?」。
以前のフジテレビは新人脚本家でもオリジナル作品という気概があったが今は新人だとオリジナル作品ではできない時代になっているという。
古沢氏は「突き詰めると脚本家の責任じゃないかと思います」と回答。プロデューサーがこの原作でやってくださいと持ってくる。ゼロから作りましょうと脚本家に持ちかけてくるケースは少ないのだという。この現状を踏まえた上で「脚本はタダなのだから書いちゃえばいい」とも。読めば面白いかどうかわかるのだから、脚本家自身が能動的にオリジナル作品を作る姿勢を持つべきだとした。
「陸王」や「半沢直樹」など数々の原作作品を手掛ける八津氏は「企画を通すときに原作などがあると安心感がある。脚本家がプロデューサーにオリジナル作品を説得できないのは確かに脚本家のせいというのはある」と応えた。木村氏はオリジナル作品にこだわる脚本家も脚色のプロも両方いていいとまとめた。
吉田氏が2つ目の質問。「配信系ドラマ、好きなモノ創れるっていう噂、どう思います?」
八津氏は「そうなんですか?」と噂を知らなかった様子。吉田氏によれば、民放のドラマは40数分と決まっている。配信系だと第1話は1時間20分、第2話は40分などドラマの尺を含めて自由なのだという。古沢氏も続けて「世界的な企業だと資金も潤沢だったり、放送コードもなかったりといったことはよく言われる」と噂については耳にしていた。しかし「魅力を感じますけど、制約も大好き人間なので」と続けた。限られた人が見るものより、みんなが楽しめる作品にやりがいを感じているという。
古沢氏は八津氏への質問。「視聴率をとるにはこうしろ!を教えてください」。
これに対して八津氏は「今はたまたま結果が出ているが以前は地べたを這うような数字だった」という。ただ、「陸王」や「半沢直樹」でコンビを組む演出の福澤克雄氏からは「余計なことを書いちゃうことがよくあるが、『お客さんが見たいものはココなんだから次はそれをやればいいんだよ』というようなことを上から大掴みで言われる。それは小難しくなく分かりやすく入ってくる作品になる。変な自分のこだわりとかを入れてしまうと数字には(結びつかない)」と応えた。
古沢氏から吉田氏への質問。「朝ドラの綿密なスケジュール感をあとで詳細に教えてください」。
「あとで」ということで吉田氏は笑顔で頷いた。
さらに、もう一問。「あとで」でいいのでと前置きした上で「組まないほうがいいプロデューサーをあとでこっそり教えてください」。
吉田氏は「いないですね」とした上で「(プロデューサーの)こういうところは好き、嫌い」は言えるとした。八津氏は「僕が悪いんですけど」と前向きした上で教えられるプロデューサーはいると笑顔交じりに応えた。
最後に「今後書きたいものは?」。
八津氏は、脚本は続けていくとしながら『路線バスの旅』みたいな番組にも出演してみたいと意外な今後を明かした。旅先で脚本のヒントを探しながら「穏やかな感じでやっていきたい」という。「自分がマンネリ化してる感じがある」との本音も。
朝ドラを終えたばかりの吉田氏は「まずは休みたい」。見られなかった映画やドラマをいっぱい見たあと、次の仕事に取り組みたいした。また、脚本家が企画を出していかないとダメという古沢氏の意見に賛同した。一つの仕事がくると、次のオファーがまとめて舞い込む。どれを選ぶかの繰り返しになり、自分たちから発信することが忙しくなればなるほど出来なくなるのだという。
古沢氏は「そのときに書きたいと思うものを自分の気持ちに忠実にやっていきたい」とした。
その上でテレビ界全体への思いが溢れる言葉が飛び出した。
「まだまだテレビには希望を持ちたい。未来に明るいものを示せるテレビであってほしい。特にフジテレビには期待していて、ネットを検索するとみんなフジテレビの悪口が大好き。でもそれくらい気になっている。フジテレビは不調だと言われているが、好調なテレビ局なんてもうない。好調と言われているテレビ局も今あるパイを守ることにかろうじて成功しているだけ。守備をガチガチに固めて失点しないようにしているように見える。いつもフジテレビは時代の先を行っていた。いまのテレビのあり方の終わりにも、真っ先に突っ込んでいっているようにも思える。だとすると、入り込んだ沼から下がってガチガチに守備を固めようとするのではなく攻めてほしい。どうせ守備はもともとザルなので。ザルでも攻め続けるからみんなフジテレビのことが好きだった。ただ攻めるというと過激なことをやると思っちゃうが、そうではなく沼の進む先はこうなってるよと示してほしい。切り拓いていくことをみんなフジテレビには期待しているんじゃないか」。
その斬り込み隊長の役割を新ドラマ「コンフィデンスマンJP」が担う、とちゃっかりPRも忘れなかったところで対談は終了した。



GUEST
古沢良太  / 脚本家
2002年に「テレビ朝日21世紀新人シナリオ大賞」でデビュー
代表作:フジテレビ「リーガルハイ」「デート」 映画「ALWAYS三丁目の夕日」「ミックス。」 新月9「コンフィデンスマンJP」も担当

八津弘幸 / 脚本家
フジテレビドラマのアシスタント・プロデューサーから脚本家に
代表作:TBS「半沢直樹」「ル−ズヴェルト・ゲーム」「下町ロケット」「陸王」、テレ朝「家政夫のミタゾノ」  映画「神さまの言うとおり」

吉田智子 / 脚本家
広告制作会社、コピーライターを経て脚本家に
代表作:フジテレビ「美女か野獣」、日テレ「学校のカイダン」、NHK「わろてんか」 映画「カノジョは嘘を愛しすぎてる」


COMMENTATOR
木村隆志 / ドラマ解説者
1973年生まれ。コラムニスト・テレビドラマの評論・タレントインタビュアーなど、雑誌やウェブを中心に活躍。
1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品をチェックする重度のウォッチャー。
また取材歴1000人超のタレント専門インタビュアーでもある。
著書「独身40男の歩き方(CCCメディアハウス)」「話しかけなくていい! 会話術(CCCメディアハウス)」「トップ・インタビュアーの聴き技84(TAC出版)」など。

 
 

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