新・週刊フジテレビ批評

The 批評対談

いまどきのメディア事情 調査から見えたテレビの将来

DATE : 2017.10.07(土)

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今、日本人は情報をどのように得ているのだろうか。
2006年から毎年行われているメディア定点調査によると、テレビの視聴時間は年々減少傾向にあり、一方でスマートフォンを利用する時間は増加。“テレビ離れ"がはっきりとデータで裏打ちされている。
また、寝床でスマホをどう使っているのかを詳細に追跡した調査によって、若者がどのようにメディアやデジタルデバイスを利用しているかが見えてきた。
今回はその最新調査の結果を詳しく紹介してもらう。
博報堂DYMP メディア環境研究所の吉川昌孝所長をゲストに、上智大学教授の音好宏氏が斬り込む。

吉川氏は1989年に博報堂に入社。マーケティングプランナーなどを経て、2004年から博報堂生活総合研究所に着任。2016年からは博報堂DYMP メディア環境研究所で所長として、メディア全般について研究。

メディア定点調査とは、2006年から東京・大阪・愛知・高知の4地区で15〜69歳の男女2496人を対象にメディアへの接触状況を調査しているもの。
まず、メディア定点調査の今年の傾向について、東京のデータを中心に紹介。大きな傾向としてどんどんメディア接触の時間が増えているということがある。それを引っ張っているのがデジタル・メディア。ここ数年はモバイルシフトと書いてあるように、携帯電話もしくはスマートフォンの時間がどんどん増えているのが大きな流れになっている。そしていわゆる主要メディア、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌の接触時間が毎年少しずつ減っている。
一方で、今年初めて携帯電話・スマートフォンの時間が少し減った。頭打ちになったのでは?という傾向分析だ。
吉川氏は、メディアや情報の意識についてのデータを紹介。トップの「世の中の情報量は多すぎる」という項目が、昨年42.1%もあるのだが、今年はさらに52.0%ということで、もう過半数の人が世の中に出ている情報は多すぎるのだと思っているという。
また、「インターネットの情報はうのみにはできない」という項目も、昨年も7割ほどだったのだが、今年8割近くまで伸びている。
さらに、「気になるニュースは複数の情報源で確かめる」という項目も伸びている。情報量増加を過剰と感じ、信頼感が求められるようになったという。
「多くの情報に当たると疲れるなというところも、いわゆる主要メディアだけではなくて、特にスマートフォンを肌身離さず皆さん多分お持ちだと思うが、触れるのを少し避けようかなという意識がこういう時間のところに出ているのかな」と吉川氏は考えている。

またメディア環境研究所では、「寝床調査」という、就寝前のモバイル行動の調査も行っている。「寝床調査」とは、寝床の中で実際にどうスマートフォンを触っているのかというのを部屋に固定カメラを置いて、スマートフォンの画面の変化を追いかけ、後日その映像をその人と一緒に見ながら「ここはどういうふうに使っているの?」「ここは何でこの画面なの?」というインタビューをするという調査。モバイル接触の増加を引っ張ってきたのが若い10代・20代の男女だったのだが、その人たちがモバイルをどういうふうに使っているのかということだ。だいたい10代20代の8割が寝床に携帯電話・スマートフォンを持ち込んでいるという数字がある。

大学生の女性Kさんは、家族と同居していて、iPhone5を所有、就寝前のモバイル行動を計ったところ2時間39分との結果だった。
まず、SNS、LINEやTwitter、Facebookをチェックし始めて、いよいよ寝ようと横になって動画を見始めるKさんのモバイル行動を、タイムラインという形で、より具体的に何をしていたのかを紹介。
Kさんは、22:06にベッドに座り、この日は時間に余裕があり、早くからじっくりモバイルと向き合えるため、リラックスしており、楽しみだったとのこと。
そして、LINEやTwitter、インスタグラムを触り、15分ほど後の22:20に寝る体勢になって、今度はFacebookを経由して、Facebookに様々な動画が入っているため、料理動画やヘアメイク動画を見始めるが、その間に友達からどんどんLINEなどが入ってくる。そうすると、LINEが入った瞬間にアプリを変えて、LINEに返事をして、また動画に戻る。このようにSNSなどのモバイル間を縦横無尽に行ったり来たりするのだ。
その後もYouTubeで、ユーチューバーのメイク動画や食レポなどを見るのだが、長くても1分ほどですぐ次の動画、次の動画というふうにいってしまう。2時間39分の中で1番長く1本の動画を見続けた時間がこのヘアメイク動画だったのだが、3分だった。
また、数十本という単位の動画を2時間39分の間に見ているが、スマートフォンを1回もヨコにせずにずっとタテで見るとのこと。
音氏は「これはテレビ業界的には大きな問題。テレビはヨコだから、タテをヨコに何とかならないと若者たちにテレビは見てもらえないということ。ずっとタテということは、既存のテレビには衝撃的な話」と述べた。
タテの画面のまま、画面上部で動画を見ている最中に、画面下部で検索しており、そちらに興味があったら、すぐ行ってしまうという。
最後は、動画についていけなくなり疲れてしまい、スマートフォンでの漫画を読みながら寝落ちのように寝ているとのこと。
「スマホのような簡単にアクセスできてしまい、様々なところにスキップできるメディアがベッドの中にあるというところがポイントだと思う」と音氏。

続いて、20歳男性のTさんは、手元にiPhone6、枕元にiPad、その視線の先に46型の全録テレビという3つを同時に流しながら見ていた。
テレビでドラマや録画されているもの、特番でやっていたものを見ながら、iPadで映画「踊る大捜査線」の有名なテーマ曲を鳴らし、「渡る世間は鬼ばかり」の家族が喧嘩しているシーンも見ている状態で、スマホではFacebook、Twitter、LINE、それから野球ゲームをやっている。そして、最後は「クレヨンしんちゃん」に行き着いて就寝したという。
テレビや映画、ドラマや漫画などを見ることは多いが、Facebook、Twitter、LINEとタイムラインにあるように、SNSをやりながら見るということは変わらないとのこと。
「ついつい我々は大きなスクリーンがメインで、手元がサブのような言い方をしてしまいがちなのだが、どれがメインかサブか分からない。強いて言うなら全てサブ」と吉川氏は語った。
また、「選んでいるのは自分という、そこがメインであるということをインタビューをしながら感じた」と「寝床調査」で感じたことも述べた。

スタジオでは、久代アナの就寝前のモバイル行動も披露。まず24時に寝ようと思い、ベッドに入って、部屋は真っ暗な状態。SNS、インスタグラム、Twitter、LINEなどをチェックしているうちに気になるものがポコポコ出てくると久代アナ。気になる事をインターネットで調べ、YouTubeで1分ほどの短い動画を見る。20本、30本と関連動画から飛び、小窓にしながら探し、気がついたらあっという間に1時間経っているという。
「寝ようかなと思っていたのに、ここで覚醒する。『もっとガッツリ動画を見たい』となり、アニメ・ドラマ等々を様々なサービスで見出す。もうこうなったら止まらない」と久代アナ。しかしそのうち電池がないとお知らせがきて、渋々寝るとのこと。
「次から次へチェーンのように繋がっていく感じが、まさにいまどきの若い方のメディア接触のスタイルなのではないかなと思う」と、久代アナの就寝前のモバイル行動が分析された。

今回の「寝床調査」では、撮影した映像を一緒に見ながらインタビューを行った。
「面白かったのが、彼らは生まれて初めて自分たちが寝床でどういうふうに動いているか客観的に見る。それで彼らが気づくことがある。」と吉川氏は、インタビューで見えた面白さについて語った。
女性のKさんの場合、彼女にとってはものすごく楽しみな時間で、リラックスできる、1日の疲れも癒せるぞと思っていた時間だったのだが、「のんびりしていたつもりだったけど、自分の姿を見て忙しいなと思った」とのこと。客観的に見て、「忙しい。こういうやり方をしているとリラックスしているのだろうか。気をつけないといけないな」という意識になっていたという。

また、男性のトリプルスクリーンのTさんは「意外とずっとスマホをいじっているのだと思った」ということで、彼の意識からするとiPadに集中しているつもりだったという。
「見たい映画を選んで見ているのだというつもりだったが、意外とずっとスマホだった。きちんと見たい映画を見られていたのか疑問」と言いながら、インタビューではきちんとストーリーや結論なども覚えていたとのこと。しかし、自分としてはもっと集中しているつもりだったということだった。
「2人とも自分の行動を顧みて、本当にこんなにやっていて良いのだろうかといったような気づきが出てきたというのが面白いなと思った」と吉川氏は述べた。

フェイクニュースが問題になっている今、情報の信頼感への意識が高まったという点に関しても調査を行っており、どういう情報の取捨選択をするか、あるいは最近の情報についてどんな印象を持っているか?を4800人以上の生の声を集めて、「今ご自身が気になっているテーマは何か?それを知るためにどんな情報源を当たるか?その中で最も信頼している情報源は何か?その理由は何か?」ということを聞いて調査。
そして、「生活者の情報ストラテジー」として3つのポイントが見えてきたとのこと。
まず、情報の信頼性があやふやになりつつあるということ、かつ情報量が多いということがあるが、その結果「“たしからしさ"でノイズはカット」するということで、これは少し怪しい情報なのではないか、少しセンセーショナルすぎるのではないかなどというものについてはカットしていくとのこと。自分なりのこれは本当かな?というのをそれぞれの人が“たしからしさ"でカットする。これだけ情報量が多くなると、絶対的にこれが正しいということがなかなか分かりにくいので、自分なりに確かなものというのを“たしからしさ"としたとのこと。

調査の中で出てきた実際の発言に、「“ほんまかいな"フィルターを強める」という発言があった。これはご自身の中に“ほんまかいな"フィルターがあるということで、吉川氏らが名付けたキーワードではない。この発言をした43歳の男性の方は「“ほんまかいな"フィルターというのがある。それを強めて、情報を見る目を厳しくしている。特にスマートフォンになってから即時的な情報や一時的な、表面的な情報が増えた気がするので、そういうものについてはなるべく深入りしないようにしている」と述べていたとのこと。
また、「センセーショナルなことは信じてはいけない」と思い始めている方もいる。
主婦の方は、あまり情報が多いというのも確かではないと思い、「自分にあった最短を見つける」という意見を述べた。
“たしからしさ"というものでカットしていくというのが、まず1つ目に出てきたポイントとのこと。

一方で、「ついつい信じてしまったという経験も多分増えているのだと思う。それによってカットしようという意識が高まっているのではないかなと思う。」と吉川氏は述べた上で、「もう情報はいいよというふうに皆が回避するようになるのかというとそうではなく、自分にとって知りたいことがある」と述べた。
そこで、次の2番目のステップでは、「4つの“たしからしさ"情報源」というものをもって、4つの情報源(@公からの発表Aみんなの意見B当事者の見解C専門家の知識)で確かめていく。
ただ、全てそれをやっていると大変なため、自分の興味のあること、特に好きなことなど、関心のあるものについてということが大事とのこと。
まず、「@公からの発表」ということで、社会的な認識としてはどうなのだろうと。
そして、「Aみんなの意見」で、世間の人が何て言っているのかというのも気になると。
それから「B当事者の見解」ということで、本人の本音の部分はどうなのだろうかと。表の情報というよりも、本音の部分の方が実はネット上にあるのではないかというので調べ尽くしたりなど。
あとは、「C専門家の知識」ということで、プロの方の判断はこの件についてどうなのだろうかと。残念ながらメディアやビークルではない。テレビだから信頼できる、ネットだから本音なのではないかということではなくて、こういう要素をマスメディア、デジタル・メディア、縦横無尽に駆使して確かめていくということをやっているとのこと。

この4つの情報源を自分なりにMIXしていく「自分なりの“たしからしさ"MIX」が3つ目のポイント。
このポイントについて、A.Hさんという主婦がドラマを選ぶ時にどういうふうにミックスしたかということを紹介。
TBSのドラマ「小さな巨人」の評判が良いと様々なところで聞いたが、それですぐ見るかというとそうではない。彼女はドラマ好きなので、外したくないという思いがあり、それだけ評判の良いコメントが並ぶと“ステマ"(ステルマーケティング 宣伝と気づかれないようなPR手法)かしらというふうに思い、うのみにしないという。
あまのじゃくなわけではないのだが、360度全部見ようという気持ちが強い。身内の口コミ、皆が何て言っているのだろうかと、家族・友人の口コミ。それからTwitterも見て、世間の人たちが何て言っているのだろうかと、口コミも世間から身内まで見る。もちろんドラマ好きなので、出演者のCMや出演者のブログなどの直接的なところ、当事者のところも見る。さらに検索で「小さな巨人 ステマ」「小さな巨人 ネガティブ」といったような言葉で検索をして、表の部分の情報と裏の部分の情報を全部見比べる。
最後に、Yahoo!知恵袋にドラマウォッチャーの方がいて、この方は専門的な人だということで、この人は何て言っているかということも全部併せて調べるという。
このように駆使する方法を、合計で100になるようなゲージ上に書いてもらったものを紹介した。
吉川氏は「様々な情報があるので、全部360度見ないと判断できないのではないかという思いが強くなってしまっているのだと思う」と述べた上で、「逆に情報が多すぎるがゆえに、自分の判断力のようなものが少し落ちているのではないかなという感じもする」と述べた。
これだけ確かめて、見て、面白いと思い、インタビューの中では「最初から見れば良かった」と言っていたという。
圧倒的な情報量の中で、自分というものを自分で決められなくなっているというところも少しあるという感じがすると吉川氏は感じている。

「モバイルの接触時間が伸びてはいったのだが量が多すぎる、スピードが早すぎるということで、少し待てよと。それはそれで良いのだが、本当にそれだけで良いのだろうかと、自分なりの情報摂取の仕方というのをモバイル、ネットだけではなくて、マスメディアも含めてやっているという感じがする」と吉川氏は語る。
また、ここ2年でマスメディアに対するイメージがV字回復しているという。
「分かりやすい、面白い、感動する、個性的であるなどという、従来マスメディアが持っていた価値が今、再評価されている。モバイルが出てきた時は、そのスピード感やボリューム感が目新しくて、評価して、いっぺんにそっちに気持ちがいったと思うのだが、それがどんどん当たり前になる中で、待てよと。それだけではなくて、同時にそういう分かりやすさや感動なども大事なのではないかというのがそのイメージの動きに出ているのではないか」というふうに吉川氏は捉えている。

テレビの役割については、「テレビは感動や癒しなどというイメージからグッと上がっていくのだが、それを粛々とやっていけば良いかというとそうではないなと残念ながら思っている。ネットのモバイルのスピード感やボリューム感をもういいとなるのかというと、そうではないと思う。それがある種デフォルト、スタンダードになっている。そのスピード感やボリューム感をもって感動する、あるいは癒されるということを作っていくというのが必要なのかなというふうに思っている」と吉川氏は述べた。
また、テレビに代わる最近のもので、「AbemaTV」や「TVer」といった新しいサービスが出てきているが、「これらは『新たにモバイルによって前提になった価値』である、手早く分かる、情報が早くて新しいということ、そのデバイスの操作性ということと、そもそもテレビが持っていた感動・興奮・癒しなどのコンテンツの提供価値がうまく掛け算になっているところがその支持を増やしているということなのではないか。この辺にヒントがあるのではないかなと思っている」と語った。さらに、「それを地上波でやる時にスピード感やボリューム感などをどう生かしていくか。テレビのそもそもの癒し・感動・面白い・分かりやすいなどというところが再注目されつつあるので、それを生かすためにもモバイルが生み出したスピード感やボリューム感というものをどう付加していくかがポイントかなと感じている」と、吉川氏は今後のテレビのあり方について述べ、締めくくった。
 


GUEST
吉川昌孝 / 博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所 所長
1989年博報堂入社。マーケティングプラナー、博報堂フォーサイトコンサルタントを経て、2004年博報堂生活総合研究所に着任。未来予測プロジェクトのリーダーとして「態度表明社会」(2009)、「総子化」(2012)、「デュアル・マス」(2014) など、生活者とマーケティングの未来像を発表。2015年メディア環境研究所所長代理、2016年より現職。著書に「亜州未来図 2010」(2003)「『ものさし』のつくり方」(2012)など。

COMMENTATOR
上智大 音 好宏(おと よしひろ)教授


 

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