新・週刊フジテレビ批評

The 批評対談

テレビが伝える気象情報のあるべきカタチ

DATE : 2017.09.02(土)

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全国各地で頻発するゲリラ豪雨、そして台風情報など、日々テレビでは気象情報が伝えられている。
この夏は猛暑という予想から一転、東日本では記録的な連続豪雨が注目されるなど、異常気象を連想させる気象ニュースがテレビを賑わした。こういった気象のニュースは、生活に密着した情報であると同時に命を守るために重要な情報でもある。
民間の気象情報サービスとして、独自の角度で命を守る情報を発信する「ウェザーニュース」。その気象予報士 宇野沢達也氏に話を聞く。気象ニュースはどのように伝えられるべきなのか?「ウェザーニュース」気象予報士・宇野沢達也氏をゲストに、ジャーナリスト江川紹子氏が斬り込む。

宇野沢氏は弘前大学で地震学を専攻し、卒業後は千葉県旭市職員として防災行政に従事。1993年から(株)ウェザーニューズに入社し、気象予報士として、天気専門番組「SOLiVE24」に出演し、特に防災・減災を専門に解説している。

宇野沢氏は、最近の気候と今後の台風シーズンに関して、「いきなり秋が来てしまったという感覚を皆さんお持ちだと思うが…」と述べた上で、秋はもともと台風が発生しやすい時期とし、今後の見通しとして、「今年、あと12〜3個は台風が発生するのではないかと見ている」とのこと。また、特に9月前半の発生数が多く、日本付近にも接近する可能性もあり、これからが台風や、秋雨前線による大雨の注意が必要な時期であると語った。日本付近に台風が入りやすくなるのは、10月頃までだが、発生は11月に入ってもあるのだという。

「ウェザーニュース」は、もともとは「気象リスク」を軽減していこうと立ち上がった会社。最初は船乗りの命を守りたいという安全性に対するサービス、主に企業向けにスタートした。その他にも個人向けのサービスがあり、最近普及しているスマートフォンのアプリケーション「ウェザーニュースタッチ」などを使って、ユーザーに情報伝達もしている。
そのようなコンテンツを作るベースは、様々な観測データや日本の気象庁も含めた世界各国のデータ全部を基にして、情報を組み立てる。

「ウェザーニュース」の中で、1つ特徴的なものに「ウェザーリポート」がある。これは、実際にその場にいる人たちが情報を送ってくれるもの。「雲の写真」や「空の様子」、あとは「晴れている」「曇っている」など、簡易的なものを合わせてだいたい1日トータルで18万通ほど届いているとのこと。宇野沢氏は、「予報を組み立てる時は、とにかく今をしっかり押さえるということも大切」と述べた上で、そのような情報も活用しつつ、予報を組み立てる「ウェザーニュース」の予報の仕方について語った。
また「ウェザーニュース」では、独自に24時間の天気専門番組「SOLiVE24」を配信しているほか、テレビ局にもBSフジをはじめ、キー・ローカルを含めて約100局の放送局にサービスを提供している。「SOLiVE24」は、24時間気象情報をずっと更新し続ける“番組”であり、会員でなくてもアクセスすればネットで見られる。

江川氏は今年の天気について、ゲリラ豪雨や雹が降ってきたこと、長い期間雨が降ったり、梅雨の時にはあまり降らず、梅雨が終わったと思ったら雨が降ったこと、8月中ほとんど日照時間がないなどの状態について、「昔の夏のイメージというと青い空が出て、白い雲が出て、夕立がバーッと降って涼しくなる」と昔の夏のイメージと比べて、今年の天気は「異常気象じゃないか」と感じることを述べた。この意見に対して、宇野沢氏は、「『気候変動』という、大きな時間をかけて全体的に気象の場が変化している、ということは言える」と述べた。さらに、「10年前20年前から見ると、確かに異常な状態になっていると思う」とコメントした上で、「ただ、だんだんそれが異常ではなくて、普通の状態に変わりつつある」とも述べた。このような変化に私たちも慣れていかなければならないということだ。

8月19日、多摩川花火大会がゲリラ豪雨により中止となったが、このゲリラ豪雨について江川氏は、「いきなりバーッと起きて、ピンポイントでバーッと降る。もっと早く予測できないものなのか」と尋ねた。宇野沢氏は、「まず『ゲリラ豪雨』『ゲリラ雷雨』という言葉は、どちらかというと予測が難しくて突然やってくるから、そういう言葉を使っている」と述べた。その上で、「ウェザーニュース」としては「ゲリラ雷雨防衛隊」という組織を作り、全国にだいたい10万人程の会員がいて、その情報を基に実際に発生する1時間前までにそこにいる人たちにアラームを発信するということもやっている、と紹介した。今回の多摩川の時にも、実際に1時間前にはそのエリアに対して、「この後ゲリラ雷雨が発生する可能性が高い」ということでアラームを発信していた。
スタジオでは、その当日に「ゲリラ雷雨防衛隊」の方から送られてきた雲の画像が紹介された。その中に、夏場によく出る上部に角のようなものがいくつか生えているように見える雲が。これは、この後さらに発達していく兆候であるという。この雲の状態から、今後発達傾向にあるということが分かるのである。そしてさらに発達してくると、雲の下が真っ黒になる。宇野沢氏は、「雲は背が高くなればなる程、たくさんの雨を降らせる。バケツと思ってほしい。バケツも大きいとたくさん水を持っているから、雨が降る。背が高くなると日を通しにくくなるので、下の方が黒くなってくる。」と雷雨を降らせる雲の特徴を述べた。
さらに、「今は観測機器が発達しており、捉えられるのではないのかと皆さん思いがちだが、この雲は実は結構、曲者で、頭の高さが2000mを超えないと気象レーダーなどに映らない」と説明。映った時にはもう手遅れで、一気に成長して激しい雨を降らせる。そのため、宇野沢氏は「早い段階で人の目で確認して、その発生を予測するということが1つのポイント」と語った。
「ゲリラ雷雨防衛隊」の方は、自分が危なそうだと思った空の様子を写真に撮影し、送ってくる。立ち上げ当初から人の目で見ていたが、会員数も10万人いるため数が多くなり、そのため、それを処理するために画像解析技術とAI技術を使って、どのエリアが実際に今危なそうなのかという判定をするようになった。

ゲリラ豪雨のテレビ報道については、「映像などを見た時に、今そこで発生しているという事実が広く伝わるということは大切なことだとは思う」と述べた。発生していない場所の人も報道を見ることで、大変さに気づく。
「ただ、危険な状況では、屋外に自らがいる状態もまた伝わってしまう。そうなると“意外と大丈夫なのではないか”と思わせてしまう、という二面性がある。」とゲリラ豪雨の伝え方の難しさを宇野沢氏は語った。このような情報を伝える際には「屋内に避難してください」ということも合わせて呼びかけた方が良いとのこと。

また、テレビでの台風の伝え方については、台風の進路予想は、まだ来ていない、今後恐らく近づいてくるであろうというエリアにいる人たちに対して、「今ここがこうなっているよ」「台風が行ったらこうなるぞ」「あなたのところもこうなりますよ」という伝え方をすると分かりやすいと思う、と宇野沢氏。
テレビ報道では、外に出てヘルメットをかぶったアナウンサーなどが情報を伝えている。そして対応策として、「なるべく屋内にいてください」「ガラスが割れた時に備えて、カーテンを閉めましょう」ということを伝えている。報道のレポートと対応策の内容が、画面上では全く逆になっている。
「ここの矛盾がまだ難しい問題としてはあると思う」と宇野沢氏。そして、「自分の身を危険にさらさない安全な対策を取りつつ、そういった外の状況を広く伝えるということが今後の課題なのかなと思う」と、課題についても述べた。

台風の進路予想図に関して、今年8月の台風5号の台風進路予想モデルが紹介された。予想図には、矢印が13本も出ている。この13本の矢印は、台風の進路予測を作るベースである各国約13の気象機関が発表した台風5号の進路予想である。西日本に向かう線、東日本にずっと外れていく線など、かなりばらつきがある。台風進路予想としてこの後どうなるか、という情報は、今はテレビを通じて情報を伝える時は日本の気象業務法という法律上、気象庁が発表したもの以外はダメという決まりがあるとのこと。「ウェザーニュースとしてはこういう進路だと思います」などとは言えないのだ。
気象庁の予想も予報のため、いつも正しいとは限らないことから、様々な説が出ている。「唯一絶対のものがこれで、それ以外はNGだという話をした時に、予報なので、そこから離れた時にどうなるのだということがある。今の予報だと全く自分のところには影響はないが、離れた時、もし東日本に行くのが西日本に行ってしまったら、西日本の人たちにとっては不意打ちを食らってしまう。」と宇野沢氏は述べた上で、「角度も含めた形でこれだけの幅があって、様々な機関が予想しているという情報はあっても良いのではないか」「あとは利用する側がそれをどう解釈して、備えるのかというところも大切」と台風進路予想のあり方について述べた。
「ウェザーニュース」の会員は、「ウェザーニュース」の進路予想図を情報として得られる。会員の場合は、契約に基づいてということになっており、特定の人に対して情報を渡しているという形だとのこと。

気象情報は命に関わるようなこともあり、その伝え方について、警報の出し方も随分変わってきている。まず、注意報・警報について、以前は東京であれば東京23区であったものが、東京23区・東京東部・西部と少しずつ細かくなってきて、今は港区・文京区・品川区とかなり細かく発表される形になっている。それから、段階としても、注意報・警報の上に特別警報ができた。宇野氏は「このような形で情報が高度化されて、自分の身に危険が迫っていることが伝わる。しかも、より細かくなることで、説得力が増してはくると思う」と述べた上で、「ただ、一方で予報のため、ブレ幅がある」とエリアの細かさによる問題点も述べた。品川区に警報が出たけど、降ったのは港区だったという話になると、港区の人にとっては、「何だ?警報出ていなかったのに何で降ったの?」と油断させるかもしれない。

また、警報の上に特別警報ができたことについて。“50年に一度”という現象に対して発表するという特別警報の場合、「『特別警報が出ていないから大丈夫かな』と思うこともあり得るのではないか」との問題点も述べた。
2015年9月9日〜10日にかけて、大雨が関東で降り、鬼怒川が常総市で決壊した水害があった。あの時、大雨となったのは栃木県内。鬼怒川の上流であった。茨城の常総市はそれと比べると雨量はあまり多くなかった。恐らく常総市の人たちは報道などを見ながら、「栃木が大変なことになっている」「栃木には特別警報が出ている」と思っていたら、実はそばの堤防のすぐ向こうでは鬼怒川がもう決壊寸前までいっていたということがあった。このようなことから、「厳しい方の情報を作ることによって、その1つ前の警報そのものが少し軽んじられてしまう可能性も含んでいる」との宇野氏は述べた。

命に関わる情報を各放送局ではどう伝えれば良いのか、様々な議論になっている。
津波に関しては、東日本大震災を機に各局いくつかの変更を行ってきた。例えばフジテレビの場合、アナウンサーの伝え方について、落ち着いて情報を伝えるスタンスだったものが、現在は切迫感、緊迫感を伝えるという形になり、呼びかけるような口調で情報を伝える。さらには、どう逃げるべきかといった具体的な方法も示しながら情報を伝えるというアナウンスに変わっている。
さらに字幕スーパーに関しては、これまでの「今すぐ避難を!」という文字、津波の到達予想時刻や高さの画面表示について、実際に放送で使われたものと、変更され、新しくなった画面表示についても解説。以前は「今すぐ避難を!」という呼びかけだったのだが、漢字にルビ付きの「津波」という文字と「にげて」というひらがなに。誰が見ても津波が襲ってくる可能性があることが分かるような文字に変更した。
また、津波到達時刻と高さの順番も入れ替え、まず最も大事なのは津波の高さの予想、そして、その後に第1波が来る時刻とし、さらに字も大きくして、分かりやすく見やすく伝えるというように変更。このフジテレビの伝え方の改善点について、宇野沢氏は「ここでのポイントは『津波にげて』だと思う。それが明確に見ている人たちに伝わるというのが大切」と述べた。
一方で、「1つ、気をつけなければならないなと自分たちも思っているのだが、この予想される津波の高さ。1mという高さがどういうものなのか。実は1mという高さはかなり高い津波なのだが、何となく感覚的に1mなら腰ぐらいかな、そういうイメージを持ってしまうため、この高さそのものを伝えるところは結構まだまだ工夫がいるのでは」と注意点について語った。
さらに、3mという高さについても、「自分の住んでいるところは高さ5mだから大丈夫かな」と思ってしまう人がいる。しかし、「津波の3mとは、あくまでも普通の海面に比べた高さだけであり、そのまま押し寄せてくればさらに高くなっていく。高台にも到達することがあるため、この表現ももう少し工夫が必要」と宇野沢氏は述べた。
台風の注意の呼びかけ方に関しても、「備えあれば憂いなし」とした上で、「まずはこういう行動を取って身の安全を確保してください」と先に伝え、「今こうなっています」「今後こうなります」という伝え方も必要であると宇野氏。

ウェザーニュースの「SOLiVE24」では、津波などの場合は、発生したらまず画面上に高さなどは出るため、「高台に避難してください」というアナウンスをとにかく繰り返し伝える形になっている。

江川氏は「どういうふうに呼びかけるのか、その地域の様々な特性もあり、地形もあるため、なかなか難しいところがあるのではないかと思う」とコメント。宇野沢氏も「確かに個々人1人1人に対して、皆さん生活の場に特徴があるため、そこに全てフィットさせることは難しいと思う」と実態としての難しさについて述べた。その上で、「まずは自分の居る場所がどういうところなのか、近くに川があるのか、崩れやすい崖があるのか、それとも妙に低くなっていて、そこだけいつも水が溜まるところがあるのか、ということを知った上で、こちらが『雨が降った時はこういうところはこうなりますよ』ということを伝えれば、『近所のあそこが危ないから近づかないようにしよう』など、自らの身を守る行動ができるような、そういう情報に変換できればなと思っている」と呼びかけや情報の伝え方について述べた。

さらに、特に水害の場合は、雨が降り出してから現象が発生するまでの時間差があるため、そこの伝え方が難しいとのこと。「まだ大丈夫だろう、まだ大丈夫だろう」と思いがちで、気がついたら溢れていたという状況があるという。一方で、避難途中で、水路が溢れていて流されて亡くなったという事例も過去にあり、そういう場合は自宅の2階に行く方が安全だったということもある。宇野沢氏は「避難はどうするのか、避難所に移動するのか、それとも自宅にとどまるのか、その辺りも決めておけば、いざという時に慌てずに済むのでは」と、いざという時の行動について語った。「自分が居る場所をよく知っておく。あとはそこでもし被害などがあったら記録しておけば、後で同じような雨が降れば同じようなことが起きるので、備えられる。」と日頃からの備えの有用性についても述べた。

また、マスメディアは多くの人を対象に情報を流している。最近はネットやアプリなどで得られる情報もある。それから、自治体の方が直接メールなどで情報を流しているサービスもある。
そのようなテレビとネットとの違いについて、宇野沢氏は「テレビは、1つの現象を短い時間で広い範囲に伝えられる。しかも見たまま、そのまま伝わるので、正確性を持っている。あとは信頼度も高いと思う。」「逆に細かな情報は、ネットの方が得意なので、そこはそれぞれの得意な分野同士をうまくかけ合わせれば、さらにより良い情報が作られていくのでは」とテレビとネットの活用方法について述べた。

江川氏は「様々な現象がある中で、私たちがどう情報をうまく活用できるかということが、私たちの命の問題にも関わってくる」と締めくくった。


GUEST
宇野沢達也  / 「ウェザーニュース」気象予報士
弘前大学理学部地球科学科で地震学を専攻
千葉県旭市職員として防災行政無線整備や地域防災計画策定に従事
1993年1月に株式会社ウェザーニューズ入社
「明るく、楽しく、真剣に」をコンセプトに参加と共有による、自助・共助を基本とした新しい防災・減災の仕組み作りを進めている
天気専門番組SOLiVE24(ソライブ24)では防災・減災を専門的に解説

COMMENTATOR
江川紹子 / ジャーナリスト


 

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