新・週刊フジテレビ批評

The 批評対談

豪華絢爛!力作ぞろい!“春ドラマ”徹底批評

DATE : 2017.05.06(土)

CATEGORIES : | The 批評対談 | ドラマ |



この春、各局合わせて約30のドラマがスタート。そこでドラマウォッチャーたちはこの春のドラマをどう見ているのか、「日刊スポーツ」の梅田恵子氏、ライターの吉田潮氏を交えて恒例のドラマ放談。

まず、ドラマ解説者の木村隆志氏は、「フジテレビは、『貴族探偵』『CRISIS』など豪華キャストの出演が多い。また、事件解決系のドラマが多い傾向もある」と、今シーズンのフジテレビドラマのポイントを語った。

この春の代表的なドラマを局ごとに並べると、次のようになる。
フジテレビは、月曜日夜9時から相葉雅紀さん主演「貴族探偵」、火曜日に小栗旬さん、西島秀俊さん出演の「CRISIS」。木曜日夜10時からは桐谷美玲さん主演の「人は見た目が100パーセント」。土曜日夜11時40分からは玉山鉄二さん、谷原章介さんの「犯罪症候群SEASON1」。日曜9時からは観月ありささん、藤ヶ谷太輔さんの「櫻子さんの足下には死体が埋まっている」というラインナップ。
日本テレビは、水曜日夜10時から沢尻エリカさん主演「母になる」、土曜日夜10時から亀梨和也さん主演「ボク、運命の人です。」など。
テレビ朝日は、水曜日夜9時から「警視庁捜査一課9係」、木曜日は2本続けて、夜8時から「警視庁・捜査一課長SEASON2」、夜9時から「緊急取調室」といったラインナップ。
TBSは、火曜日夜10時から「あなたのことはそれほど」。金曜日夜10時に、藤原竜也さん主演「リバース」、日曜日夜9時「小さな巨人」といったラインナップ。

そうした中、今期おすすめのドラマをゲストら3人が紹介。
木村氏と梅田氏が共に挙げたのが「CRISIS」。その理由について木村氏は「小栗旬さんと西島秀俊さんのダブル主演。3年前の春に『BORDER』と『MOZU』というドラマがあり、木曜日9時から表裏で放送されていた。どちらも人気のある刑事ドラマだったが、『CRISIS』は、その両番組の主演2人をキャスティングしている。それだけで迫力があり、この2人が1年間を格闘武術の練習に費やし、アクションを行っている。相手役のアクション俳優もレベルが高い。そこまでやり尽くしているというところも含めて、見応えがあると思う」と絶賛。
一方、梅田氏は「2人が立った時の格好良さが半端ない。演出、共演者、皆が主演を魅力的に魅せるのがドラマだと思っているので、本当にお勧め」と述べた。さらに、アクションについても触れ、「1話の冒頭20分の戦闘力爆発のアクションが呼吸を忘れるとはこういうことだなと思うほどものすごかった。絶対面白くなると思っていたら、本当に面白かった」と付け加えた。
吉田氏は「これ見よがしのアクションが気になるといえば気になるが、それでも格好良い。公安の案件なので、庶民からすると遠い事件。実は、野間口徹さんの役柄が一番すごいのではないかとも感じ、アクションよりも能力が重要になっている側面も否めない。今後もっと人間ドラマが出てくることを期待している」と見解を述べた。
脚本は金城一紀さん。「BORDER」や「SP」の脚本も手掛けており、木村氏は金城さんについて「予定調和を嫌う人なので、後味の悪い終わり方をすることもあるが、それもまた魅力」とコメント。

また、木村氏はNHK金曜10時放送「ツバキ文具店」もおすすめに挙げた。演出は、美しい映像を撮ることに長けた黛りんたろう監督。
木村氏は「この方が繊細で丁寧に鎌倉の景色を撮っている。人の心の動きなども含めて、時間をかけて丁寧に撮っており、これはNHKにしかできない芸当であって余裕がある。こういうものを撮るためにNHKはあるのかなと思わせてくれるような作品」と魅力を語った。

吉田氏が挙げたのは、テレビ朝日の昼12時半から放送の「やすらぎの郷」。
脚本は倉本聰さん。吉田氏は「倉本聰の倉本法というぐらい、社会に対して、テレビ局に対して、罵詈雑言、文句の垂れ流し。社会派でもあるし、骨太と言いながらもえげつなさが出るドラマなので、毎日見ている。これは今期No.1だと思っている」と脚本を称賛。さらに、キャストの演技力も見逃せないという。「過去の背景も見えつつ、お年寄りといってバカにしてはいけないと思わされる。石坂浩二さん、加賀まりこさん、浅丘ルリ子さんらが過去の話で盛り上がり、本当に香ばしい内容。私はこのドラマのように自分が主語の年寄りになりたい。生き様を見せてくれるというところがすごく好き」。
また、吉田氏は「母になる」も挙げた。「類似した作品もあるが、沢尻エリカさんの泣く演技は格別。そして、藤木直人さんが今までは、いけ好かないエリート役が多かったが、今回は心に傷を負った男性を非常に繊細に演じていて、目が釘付けになる」。
これには梅田氏も賛同し、「藤木さんはコミカルな演技も上手だが、今回は父親の慟哭や愛情が表現されていて、完全にノックアウトされている。沢尻さんも上手い演技を見せていて、この夫妻を応援できる。ヒール役がどのように絡んでくるのかも楽しみ。小池栄子さんも上手く、今後彼女たちの戦いがどうなるのか心配しつつも楽しみ」と語った。
最近のドラマはハイテンポな作品が多い中、「母になる」は丁寧に心理描写を積み重ね、ゆっくりと描いている。木村氏は「こういう作品は視聴率が厳しいが、ファンは多いと思う」と分析した。

さらに「人は見た目が100パーセント」も推奨した木村氏。
「『ライアーゲーム』や『失恋ショコラティエ』なども撮った松山博昭さんが監督。面白い作品を自由に撮らせたらすごい人だが、その人がますます自由に撮っている。首が一回転してしまうなどの演出が、良い感じではまってきている。原作は漫画だが、漫画原作を上手くドラマに落とし込んでいる点も素晴らしい。恋愛や生き方についても、きちんと楽しめる」とのこと。
このドラマは梅田氏も楽しく見ていると言い、「1話は今一つのテンポだったが、2話から驚くほど面白くなった。話が具体的になってきて面白い。クラッチバッグでトイレに入ったら置き場所がない、そもそも何にも入らないなど、分かるなというエピソードがたくさん出てきて、テンポ良く楽しめる」。また、出演者のブルゾンちえみさんのことも評価し、「ここまで自然で上手な演技をする方だと思っていなかった。今期の助演女優賞」と絶賛。ブルゾンちえみさんのキャスティングはブレイク前に決まっていたという。
吉田氏もこのドラマは好きだというが、「ただ、ドラマとしてというよりもNHKの『祝女』のようなコント番組に近い気がする。3人が無言になってシーンとする場面が何回かあるが、あの間がとても好き」とのこと。
また、木村氏は「見ないで叩いている意見がネットでは目立ち、タイトルと桐谷さんのイメージが合わないというところで損してしまっている。しかし、見れば面白いと声を大にして言いたい」と思いを語った。

そして、「あなたのことはそれほど」を挙げた吉田氏は「不倫をどう描くのかと思ったら、全く罪悪感なしの主人公が滔々と不倫をし、夫や周りを責めていく。その無自覚さ、空気の読めていない業の深さにゾワゾワする」と感想を述べ、「不倫をただ罰するだけではないので、これからの展開が非常に興味深い。恋に落ちるとこうなってしまうという、分かる部分もあるし、制裁を受けなければいけない、悪い女は罰せられなければいけないという部分も、どう描くのかがとても楽しみ」と語った。

一方、「小さな巨人」を挙げた梅田氏は「はっきり言ってしまえば半沢直樹の警察版という、日曜劇場特有のパターン。権力闘争と実際に起きている管轄内の事件が上手くリンクしていて、どちらも見応えがある。長谷川博己さんがとても魅力的で、全身から漂う品格がエリートの言動に嫌味を感じさせない。また、岡田将生さんも敵なのか味方なのか微妙なところで、良い色気がある。2人とも長身なので、にらみ合った時が格好良い」とポイントを伝えた。また、「働く人であれば分かる、組織の中での立ち居振る舞いや失敗したときの対処など、自分と重ねて楽しむこともできる」という視点も示した。
しかし、木村氏は「男性は弱い者が強い者に立ち向かうドラマが好きなので、良いと思うが、だからこそ企業の物語にしてほしかった。警視庁対所轄という構図は『踊る大捜査線』などで散々見ている。刑事ドラマの方が視聴率を取れるという頭があったのかと深読みしてしまいたくなる」と持論を展開。

そして、久代アナも注目作を発表。
1つ目が「女囚セブン」。主演の剛力彩芽さんが第1話ではほとんど台詞が無い。
そのため久代アナは「主演なのに謎が多い。また、他の人物もそれぞれ謎が多く、今後が気になる作品」と評価。
2つ目に挙げたのは日曜日夜9時放送の「櫻子さん」。
アニメ版を見ていた久代アナは、主人公のイメージが観月ありささんにぴったりだと思っていたという。
木村氏は「櫻子さん」に関して「テーマがニッチでマニアック。思い入れが深い人は深いというところで、賛否が出やすいだろう」と分析。

そして、フジテレビが力を入れているのが月9の「貴族探偵」。月9は今年30周年を迎える。しかし、吉田氏は「もったいない。相葉さんの良さが出ず、豪華なメンバーの良さも出ず、空転している感じがする」と指摘。「生瀬さんは本当はもっと面白いコメディー筋肉があるが、面白く見えない。これは致命的。これから何か盛り返す秘策があるに違いないと思っている」と厳しいながらも期待を寄せた。
梅田氏は「相葉さんのあのキャラクターは好き。物腰柔らかな中に、きついことをバシッと言うようなキャラクターで、とても端正に相葉さんは演じていると思う。その気配をもっと全編60分の中に漂わせてほしい。どこを見れば良いのか分からず、混乱する」と残念な理由を説明。さらに「水戸黄門的なフォーマットと世界観なので、そこを相葉さんに出してもらえるような演出を期待したい。そうするとひとつの定番として固まり、水戸黄門のごとく楽しめるポテンシャルを持った作品になると思う」と提案した。
木村氏は、このドラマのPR方法に着目。「『とくダネ!』で毎週スピンオフをやったり、LINELIVEでその翌週の出演者が出て、オンタイムで自由に喋ったりしている。それ以外のネットの動きも良かったので、PRに関しては今まで無かった形。単に出演者が出て、番宣するだけではなかったというところが良かった」と評価した。そして、月9の在り方について「この2年間は若年層向けの恋愛モノを作ってきた。30周年で事件解決モノに変えてしまったことで、若年層の恋愛を期待している人たちはどこにいってしまったのだろう。フォローしているのかというところが気になる。ファンはたくさんいた」と問題を提起。

日曜夜10時30分放送の「フランケンシュタインの恋」については「亀梨和也さんでやっていた『妖怪人間ベム』のプロデューサーで、何かそれっぽいなという感じ。何々っぽいという点がありすぎる。『シザーハンズ』」っぽい額縁で、中身は『妖怪人間ベム』。感情が高ぶると変身してしまうことや体からキノコが生えてくるのも既視感が否めない。いろいろ気が散ってしまって、この怪物に集中できなかったというのが正直なところ」と梅田氏。
木村氏も「主人公が怪物という荒唐無稽の設定。これは視聴率好調な日テレの余裕でしかないと思う。かつてフジテレビはフランケンシュタインではなく、ドラキュラをやっていた。これは余裕があるからと考えてしまうし、マストを狙うという感じがしない。狙えたら良いが、難しいかもというところがどこか透けて見える」と批評した。
これに対し吉田氏は「綾野剛さんが好きな人には良い。初回から全裸に近い状態で出てきたし、首からキノコが生えるというのも何かの暗喩かと考えさせる。柳楽優弥さんの家、工務店のシーンは非常にコミカルで好きなので、見守っていくつもり」と好意的に捉えていた。

なお、視聴率が第1話から高かった「緊急取調室」は誰もおすすめに挙げていない。
その理由について木村氏は「強い女、媚びない女性が主人公で、毎回主演級のゲストを招いて対峙させていくという『ドクターX』フォーマットに近い、勝利の方程式で作っていて、視聴率が取りやすいと感じさせる。脚本が井上由美子さんで、会話や取り調べの攻防をもっと盛り上げられるはずだと思ったので挙げなかった」と期待の高さから挙げなかったと説明。
梅田氏は「男社会の中で、媚びることもなく、しなやかにスイスイ進んでいく主人公のドラマは、組織で日々苦労をしている女性達にはファンタジーのよう。最近はどうすれば男の人に好かれるかというところにばかり注目するドラマが多い中で、ここの枠を見れば、そういう疲れるところからは解放される」と、他のドラマと比較。
吉田氏は「シーズン1より確実に面白くなっていると思う。シーズン1は天海祐希さん演じる主人公の夫が謎の死を遂げたというバックボーンのエピソードがあり、毎回、取調室で様々な容疑者と向き合うメインエピソードがありと、少し散漫だった。シーズン2は旦那のことは忘れて、毎回の取り調べに専念するのですっきりしている」と高評価。さらに「でんでんさん、小日向文世さん、田中哲司さん、大杉漣さんと周りの人達がすごいメンバー。しかも、それぞれが様々なキャラクター性をちょっとしたシーンで出し始めている。でんでんさんなんか天海祐希さんのことを『おばはん』と言う。頭をポンポンされるよりずっと良い。チームワークも高まっていて非常に面白い」と語った。
自ら頭ポンポンされたい側だと言う久代アナは、同じ強い女性が登場するドラマでも「恋がヘタでも生きてます」が好きとのこと。「プライド的にはそういうことをされたくない強い女が揺らいでいる方が感情移入できる」という。

NHKの「4号警備」については「主演の窪田正孝さんが躍動感がある。陰があるけれども明るくチャラくというキャラクターはとても魅力的。山田太一さん脚本、水谷豊さん、桃井かおりさん出演の『男たちの旅路』というドラマは警備員を主人公に据えたシリーズだったが、その素晴らしい世界観が現代風になり、良いDNAがここで受け継がれて嬉しい」と梅田氏。
このドラマは30分枠だが、「もし、45分や60分だったら、もっと背景が広がるというのはある」と吉田氏が語ったところ、木村氏が「これはNHKがずるい」と発言。「たかが30分のドラマをやるということ自体が余裕がある。視聴率も関係なく、やりたいことをやるのだと。30分でコンパクトに見せるのだという部分が民放では絶対できない」と解説した。NHKがドラマ制作にかけている時間は民放より長いと聞いているという木村氏は「時間とお金に余裕がある。良い俳優さんも使っているし、脚本も悪くないし、それは上手く生かしている作品だが、だったら万人受けするような形のPRも含めてやってほしい」と意見した。

藤原竜也さん主演の「リバース」について「藤原さんは本当に面白い。1話は爆笑するシーンがいくつもあった。サスペンスなのにすごい。攻めた演出だと思う」という梅田氏。原作の湊かなえさんも「私の作品でこんなに爆笑が起きたのは初めて」と感激していたといい、「本当に駄目な男を一生懸命演じて笑わせてくれて、こんな人が人殺しと指弾されていくという、その落差が本当に胸の痛い感じ。この演出、好み分かれるだろうが、とても好き」と称えた。
このTBS金曜10時の枠は、いつも日テレのジブリ祭りなどと重なる。これについても梅田氏は「必ずジブリ祭りを持ってこられてしまう。今回はシンデレラを持ってこられてしまった。毎回何かぶつけられてしまうのにもへこたれず、丁寧に作っているこの枠は品質が保証された番組だと思っている」とドラマ枠全体を評価。
吉田氏も藤原竜也さんを高く評価しており、「今までは重い役が多かった。蜷川幸雄の呪いがかかっているような。しかし、今回は車に乗ってきた武田鉄矢さんに対して『乗らないで!』と言うなど、吹き出してしまうシーンがあり、新しい藤原竜也さんを見られるという喜びがある」と好感ポイントを紹介。他のキャストについても「市原隼人さんと三浦貴大さんが今回は悪い立ち位置で、過去をほじくりかえしていくという話。だから、そこがどう嫌な感じで攻めていくのか楽しみ」と述べた。
木村氏は「今は一話完結のドラマが多い。その中でミステリー、サスペンスの連ドラとして1本の大きな幹を作るというのは、やりたいけどやれない。だから、それをやっているだけで素晴らしいし、ドラマ界の良心のような枠になっている」とドラマ業界全体からの知見を述べた。


GUEST
吉田 潮 / ライター
編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。
2010年より「週刊新潮」で「TVふうーん録」連載開始。
東京新聞のコラム「風向計」連載中。
著書に『TV大人の視聴』(講談社)など。

梅田恵子 / 「日刊スポーツ」芸能記者
<プロフィール>梅田恵子(うめだ・けいこ)
東京都出身、法政大学卒 1989年に日刊スポーツ新聞社入社。主に芸能を担当、2011年からウェブサイト「ニッカンスポーツ・コム」で芸能コラム「梅ちゃんねる」を連載
脚本家・市川森一作品の大ファン


COMMENTATOR
木村隆志 / ドラマ解説者
1973年生まれ。コラムニスト・テレビドラマの評論・タレントインタビュアーなど、雑誌やウェブを中心に活躍。
1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品をチェックする重度のウォッチャー。
また取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など

 
 

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