新・週刊フジテレビ批評

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美術セットのデザインにはどんな秘密があるの?

DATE : 2017.03.11(土)

CATEGORIES : | ハテナTV | 技術・美術 |



2月24日から開催されている『フジテレビ セットデザインのヒミツ展』。これは普段、テレビでしか見られない美術セットの秘密をのぞけるイベントだ。テレビ番組のイメージを形作る大事な要素の一つであるスタジオセット。そのセットがどのようにしてデザインされているかを取材した。

会場となるのは横浜にある『放送ライブラリー』。今回のイベントは、現在フジテレビで放送中のバラエティ番組や、昨年秋に放送されたドラマのスタジオセットが再現され、普段は見られないセットの秘密を知ることができる。過去3回はお台場のフジテレビで開催されていたが、4回目となる今回は規模を拡大して横浜で開催された。
取材に訪れた久代アナを迎えてくれたのは美術デザイナーの鈴木賢太さん。現在、ドラマからバラエティまで27本もの番組を手掛ける、フジテレビ美術制作センターの売れっ子デザイナーだ。代表作は『VS嵐』や『スカッとジャパン』『バイキング』、ドラマ『医龍』など。実は『新・週刊フジテレビ批評』のセットも鈴木さんのデザインだ。
鈴木さんの案内で会場をリポートする久代アナ。入ってすぐの場所には、毎週日曜深夜に放送中の『そんなバカなマン』のセットで、番組の象徴である巨大なバナナ型のオブジェが展示されている。このオブジェは出演者の椅子にもなっているのだ。
「セットも番組タイトルをそのまま表したようなオブジェを作ろうという話になって制作した。スタッフから『バカな』『バナナ』な世界を作ろうとだけ言われて、後は全部お任せだった」と語る鈴木さん。
美術セットのデザインは制作スタッフが示すコンセプトを元にして、美術デザイナーがイメージを膨らませ、デザインを描き起こす。このイベントでは試行錯誤を重ねたその過程も分かるように、描いている途中まで見せている。
セット横のモニターには、鈴木さんが描いたデザイン画が次々に描き加えられていくプロセスが動画のような形で映し出される。最初は制作スタッフからオーダーされたコンセプトの言葉から連想されるセットと椅子。描かれた椅子はバナナの輪切りのようだ。しかしこのデザインは、バナナの輪切りが印象に残らないという理由でボツ。鈴木氏曰く、「座ってしまうとバナナの輪切りと分からなくて面白くない。『バカな』と言っているのにセットがバカさ感で負けてしまってはいけない」とのこと。
それを受け、新たに描かれた第2稿では、出演者をイメージしたキャラクターが追加され、賑やかになっている。さらに第3稿では今まで出たイメージをまとめ上げ、ようやく椅子の形もバナナそのものに。こうして試行錯誤が重ねられ、番組の顔となるセットができあがる。

続いては『とんねるずのみなさんのおかげでした』の『モジモジくん』のセットや、『痛快TVスカッとジャパン』の『スカッとボタン』が体験できるバラエティ番組のコーナーへ。
中でも注目は、毎週木曜に放送中の『VS嵐』の番組中のゲーム、『ローリングコインタワー』の展示だ。「ディレクターからの“みんなで周りを囲みながら高く積んでいくゲームをやりたい"というふわっとした要望を、“こういうアイデアなら実現できる"とこちらから提案したりして形にしている」と語る鈴木さん。
スタジオセットとゲームを作る場合の違いについて聞くと、「大事なのは拡張性。やっているうちに慣れてしまうので、いかに慣れても難しくなるエレメントを持たせられるか。速く回せる用意があったり、より高く積めるための大きいコインを用意するなど、どんどん変えていけるのが大事」と述べた。
実際、セット横の階段も後からできた物で、「大体こういう高さで終わるだろうと思っていたら、レベルがどんどん上がってどんどん高くなっていき、それに対応するために人間も高く上がれないとダメになっていった」と述べる鈴木さん。このように美術デザイナーはゲームの展開までも考えているのだ。

さらにブースの一角には、バラエティ番組のデザイナーのデスクを再現したものが展示されていた。鈴木さんのデスクも半分くらいイメージされているとのこと、何枚ものデザイン画が散らばり、没になったアイデアのデザイン画がゴミ箱に無造作に捨てられていたり、見覚えのあるバラエティ番組の被り物が飾られたりしている。
そのデザイン画の中には衣装デザイン画もあった。鈴木さんによると、「これは『VS嵐』の衣装デザインを頼まれた時の物で、番組の企画でババ抜きをよくやるので、トランプの柄を取り入れた衣装をデザインした。デザイナーというとセットだけの仕事と思うかもしれないが、実際にはグラフィックの部分であったり衣装であったり、トータルでやることも多い」とのことだった。

続くブースで久代アナが見つけたのは、ドラマ『Chef〜三ツ星の給食〜』で天海祐希さん演じる星野光子が実際に引いていた屋台。物語の第4話から重要な舞台となる物で、光子自らデザインして組み立てたという設定。
「料理のプロだが大道具のプロではない。その人間が真剣に作ったという設定だと、きっとこうなるであろう、と考えて、ボロさというか不安定さをわざと入れている」と語る鈴木さん。よく見ると、実際に建物に使われていたドアのパーツだったり、ワインが入っていた木箱も屋台の一部として使われている。その他にも屋台の色がきれいに塗られていなかったり、布を留めるピンも不揃いだったりと、ちぐはぐさを表現している。
しかし実際、テレビの映像では細かいところまで見えないのでは? 鈴木さんも、「そこが我々はちょっと悔しい。一生懸命作るのだが映像で伝えきれない部分がある。今回の展示こそがそのディテールがすべて分かるので、細かく見てほしい」と訴えた。
今回は作品を見せる側だが、実際に作品を見てどんな事を思うのだろうか。鈴木さんは、「どうしてもちょっと職業病で、役者さんの後ろにある窓を留めてある釘が変な角度になっている、とかそういう細かいところばかり見えてくる」と語った。

細部にまで行き届いたこだわりの数々、そんなドラマのデザイナーのデスクも展示されていた。バラエティの方とは違い、看板のサンプルや家具のカタログなど、実際に日常で使われていそうな物が並んでいる。それはドラマなのでよりリアルに近づける必要があるためだ。壁材や型紙のカタログまであり、まるでリフォーム会社のよう。「木目だけをとってもこれだけのサンプルから選んでいたりする。実際に世の中で起こる内容の出来事が多いので、本物でないといけない」と鈴木さんは語った。
またドラマは現実味を持たせる事が重要なため、イメージしやすいようにデザイン画を描く量もバラエティより多いという。さらには家の模型まで作ることもある。「完成品ではない途中の模型を作ったりもする。“ここから覗くとどう見えるか?"を検証するためだけに、簡単な模型を作る場合もある」という鈴木さん。セットを建てる前に模型を作ると、平面図では分かりづらい奥行きや高さなど、イメージがわきやすくなるのだ。
こうしたセットは1つのドラマでいくつくらい作るのだろうか? 「恋愛モノとかだとみんなが集まるバーやレストラン、後は主役の家、学校など、大体3つくらいがメインになる」という鈴木さん。さらに、「刑事モノや病院モノなどの事故のシチュエーションとなると、1話ずつ大変な規模のものが発生したりする。毎回作り直さないといけない。場合によっては全部で20杯くらい作ったりもする」と説明した。
ここではそんな大変なドラマの裏側も見ることができる。また、ドラマ『カインとアベル』で、山田涼介さん演じる高田優の部屋のセットも公開中だ。
さらにデザイナーさんのデスクを再現しているブースでは、好きなように触れるようになっており、ファイルなども自由に見ていいので、実現しなかったデザインも含めて全部見ることができる。
このイベントについて鈴木さんは、「画面で見て印象に残っていて、実際そこで使われていた物が、触ってみたら“どんな質感でできていた"、“裏側はこうなっていた"、“これにボツになったアイデアがあったんだ"というのがここに来ると全部見られる。より深く知るために足を運んでもらえれば、いろいろな事が発見できると思う」と語った。
『フジテレビ セットデザインのヒミツ展』は4月9日まで開催。時間は午前10時〜午後5時まで。

今回、会場を案内してくれたデザイナーの鈴木さんは、この『新・週刊フジテレビ批評』のセットもデザインしてくれている。デザイン画には実際にセットが建つ前のイメージが描かれ、既に背景のカラーリングも並んでいる。シンプルなデザインながら、テレビのカラーバーを分解したイメージということで、より映像がクリアになったテレビの画質、画素を表しているという。
実はこのセットも今回が最後で、次回からは鈴木さんが新たにデザインした、新しいセットに変わる。よりぬくもりをプラスしたデザインになるので乞うご期待。

コメンテーターの江川紹子氏は、
「彼らはたぶん画面を通してのイメージを頭の中で描いているのだと思う。そういうところがやはりすごいと思うし、衣装までデザインするというのは驚いた。いろいろなことができなければいけないのだなと感心した。またこのイベントで、実際に触れられるというのは面白いと思う」とコメントした。


 

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