新・週刊フジテレビ批評

The 批評対談

テレビとファッションの大切な関係

DATE : 2017.01.28(土)

CATEGORIES : | The 批評対談 | 技術・美術 |



世界が注目したトランプ大統領の就任式。その中でもう一つ関心が集まったのがメラニア大統領夫人のファッションだった。俳優やタレントのみならず、政治家やスポーツ選手などのファッションは、テレビの画面から伝わる重要な情報となっている。テレビが映し出すファッションはどう読み解けば良いのか。編集者の軍地彩弓氏に聞いた。

「小池百合子都知事以降、女性政治家のイメージが変わってきたと思う。小池知事は国会議員時代よりも、より“色"で前に出てきているというイメージ。やはりキャスター出身ということもあり、上半身の使い方が非常に上手」と語る軍地氏。さらに、「選挙の時のテーマカラーというと、小池氏の黄緑や井脇ノブ子氏のピンクなどを思い浮かべるが、それは“選挙の色"であり、戦略的に来ている部分が大きい。しかし今の小池氏は常にカメラが追い、一挙手一投足がテレビを通じてお茶の間に流れるので、1日に何回もジャケットや衣装を替えている。“選挙のための色"から“普段のファッション"にも意識を持った初めての女性政治家だと思う」と分析した。
日本と欧米を比較した場合、政治家のファッションについての捉え方が全く違う。軍地氏は、「ファーストレディとしては、ミシェル・オバマ前大統領夫人がすごく印象的だった。やはりPRの国なので、いかに自分のパブリックイメージを作り上げるかというところにファッションを活かしている」と述べた。さらに費用についても、「ミシェル夫人の場合も、スタイリスト費や衣装費、ヘアメイクやネイルなど、彼女の外見に掛けるお金としてきちんと予算が組まれている。アメリカの大企業の場合、CEOクラスになると女性社長も多く、やはり彼女たちは衣装費をきちんと計上している」と説明。その理由として、「パブリックイメージが確実に会社のイメージアップにつながる。同様にミシェル夫人が何を着たか、ということが、やはりアメリカのイメージになる。彼女は『VOGUE』の表紙を何度か飾っているが、やはりファッションアイコンとしての意味合いも出てきて、それがオバマ氏の人気にもつながってくる。そういった意味で、戦略的に見てもやはり欧米というのは非常にファッションというものを重要視している」と語った。
軍地氏は安倍昭恵首相夫人のスタイリストを務めた経験もある。2014年11月、APEC出席のための外遊の際だ。「ミシェル夫人の例もあり、どうしても日本のブランドを着ていることをきちんと海外にアピールしてほしかった」と軍地氏は振り返る一方で、「しかし実は予算がないという現実もある。いいモノを着て表舞台に出たくても、国費で動いている以上、多くの金額を費やすことはできない。予算がないのでどうしても地味になってしまい、自腹で洋服を買うことも多いと聞いた」と厳しい実情を述べた。

ここで最近話題の6人の政治家の写真パネルを見ながら、軍地氏にファッション・チェックをしてもらった。まずはドナルド・トランプ大統領について。
「一言で言うと、アメリカ人の70歳の不動産王の格好。80年代のバブル期を駆け上ってきた、いわゆる典型的な不動産屋ファッションという感じ。赤いネクタイも20代の頃と同じ格好で変わっていない。やはり人は“モテた時代"を引っ張る傾向があり、自分の勢いのいい時代で、奥さんを何人も替えてモテ男としても君臨していた時代性が見えて、古く感じられる。やはり“20世紀のファッション"だと思う」と軍地氏は分析した。
さらに「周囲にPR担当の人もついていると思うが、たぶん聞く耳を持たないのだろう。自己アピールであり、自分の意志を強く出しており、自分の主義主張は曲げないという頑なさを非常にファッションから感じる。サイズが合っていない感じもするし、恐らく高価なものを着ていると思うが、自分のスタイルを捨てない人だという風に思う」と述べた。
今回、メラニア夫人の就任式のファッションについて、ブランドに関する情報が事前に全く聞かれなかった。これについて軍地氏は、「通常、ファッション業界では、アカデミー賞とかカンヌ映画祭のような大きなイベントの際には、“誰が何を着た"という情報が事前に流れるもの。ファッションブランドもPRに一生懸命なので、こういうビッグイベントがあれば、本当は3カ月前くらいから洋服が用意されているはず。前回のミシェル夫人の時には我々も事前情報は得ていた。それが今回はギリギリまで出てこなかったというのは、やはりファッション業界がトランプ氏を見る否定的な空気感が、そのまま表れていると思う」と分析した。
さらに「イメージダウンになるのを怖れるということもある。例えばそれによって不買運動が起きたりと、ニューヨークでは日本の我々が思うよりずっとトランプ氏に関して敏感になっている。ティファニーの前で大規模なデモが起き、5番街も大変な状況なので、ファッション業界もいろいろな意味で非常に影響を受けている。選挙前、選挙中を通じてアンチ・トランプを表明していたデザイナーも多かった。就任式で“誰が歌うか"と同じで、なかなかみんな火中の栗を拾おうとはしないイメージはある」と述べた。
やはりアメリカでは、ファッションの力が政治などと非常に密接な関係にあるようだ。軍地氏も、「キャンペーンの時もそうだが、“先進的な人"なのか“古い人"なのかが全部ファッションで表れてしまうので、そういう意味でもファッションはPRの力として使われているのだと思う」と語った。

前大統領のバラク・オバマ氏のファッションについてはどうだろう。軍地氏は、「日本でも流行っている細くてスリムというファッション。オジサンで肉がついてきた時に細身は着られないので、これはやはりオバマ氏の若さのアピールであり、元々鍛えられた肉体に加えて姿勢も良く、駆けて登場する躍動感もある。やはり“若さ"“スマートさ"“躍動感"が、ファッションによって非常にアピールされていたと思う」と分析した。
コメンテーターの速水氏も、「日本でも、オジサンか若者かでスーツの選び方が全く違う。それは体型だけでなく、やはり自分たちが若い頃に着ていたモノをそのまま着るという意味では、トランプ世代、オバマ世代でスーツの選び方も違っているかもしれない」と述べた。同じく軍地氏も、「やはり違うと思う。20世紀型、21世紀型という変化ぐらいに。そういう意味ではファッション的にも時代が逆行してしまった」と語った。

近年日本の政治家もずいぶん進化したと思えるが、安倍晋三首相のファッションについてはどうなのか。「安倍首相は“ザ・スタンダード"。銀座のテーラーを愛用しており、素材と仕立ては非常に綺麗だが、やはり20世紀型の古いシルエット。これはある種、センスというより格式というか、安倍首相の経歴や血筋がものすごく見えてくるファッションだと思う」と分析する軍地氏。さらに、「スーツで言えば、英国式とイタリア風というスタイルの違いがあるが、安倍首相の場合は非常に正統性があり、イタリア風なモノもアメリカ風のスタイリッシュなモノも着ない。やはりその英国式センスのような部分で着ているのだろうと思う」と述べた。

続いて冒頭にも触れた小池百合子都知事。軍地氏は、「小池都知事はオーダーメイドのカラースーツがポイント。銀座の老舗ブランドで、銀座で働く水商売の女性たちもよく着ている。さらに金色のネックレスで顔のフレームをきちんと見せている。ある程度年齢が行った時にちょっとくすみがちな肌を綺麗に見せるなど、画面映りまで含めてすべてきちんと設計している感じ。さすがにキャスター出身というか、上半身の力、効果というのを良く知っている」と分析した。なるほどどうしてもファッションはトータルで考えてしまうが、『テレビに映るのはここだ』というところにちゃんと着目している。軍地氏も、「上半身にお金をかけているので、ボトムは普通のタイトスカートが多く、紺・グレー・茶といった色を着回ししているイメージ。すごく上手に洋服を選んでいるし、その辺も小池氏のうまさだなと思う」と述べた。

一方、野党の女性党首・民進党の蓮舫代表については、「やはりトレードマークの白のイメージだが、襟を立てた着こなしに彼女の攻撃性が非常に表れている。襟を立てるというのは80年代・90年代のバブル期によく見られた。これは元々彼女がグラビアアイドルだった当時に流行したファッションなので、そこで時間が止まっているのかもしれない」と分析。さらに、「襟を立てるというのは威嚇的で、野党の党首として攻撃的な部分をファッションでも出していこうというのが、やはり“強い"イメージに受け取られがちだと思う。すごく綺麗だしスタイルも抜群だし、自身のスタイルにも自信があるのかなと思う」と軍地氏は述べた。

最後に稲田朋美防衛相のファッションについて聞くと、「稲田氏は元々“クールビズ"をやっていたので結構日本のブランドを着ているのだが、ちょっと前に海外に行く時に着ていたのがスウェットのような服で、やはりちょっと昔のファッションだと思った。これはあくまで個人的な印象だが、泣いたり、ちょっと弱くて守りたくなるところを見せたりと、稲田氏は“男性受け"を狙っているような感じがする。実際はもっとしたたかかもしれないが」と分析した。一方で軍地氏は、「稲田氏は地元・福井の眼鏡を愛用している。鯖江などは世界に冠たる眼鏡生産地としてブランド化しており、ちゃんとその日本ブランドを身に着けていることを表明しているので、そこは本当に応援したい」と述べた。

さて今度はアナウンサーのファッションについて聞いてみる。かつての女性アナウンサーはカッチリしたスーツ姿の報道のイメージがあったが、今ではずいぶんと、特にフジテレビではイメージも変わったと思うが。
「確かに昔に比べて柔らかいイメージ。ソフトなパステルカラーなど、柔らかい色を着ている。昔、『ViVi』時代には、“彼のママに会いに行く服"というテーマの時に、そのお手本としてフジテレビのアナウンサーを真似しよう、という企画をよくやっていた」と語る軍地氏。
そこでまず西山アナのファッションをチェックしてもらった。「西山アナはやはり年相応のほどほどのコンサバ感と、ちょっと引いている感じ。大人のセンスも感じるが、やはりちょっと地味」とやや辛口の軍地氏。西山アナの場合、スタイリストに全部お任せで、「番組の内容によって変えてくれていて、この番組だと視聴者の意見をしっかり聞いてお答えするという内容なので、普段よりも地味めか、少し柔らかいがカッチリめというコンセプトで選んでくれている。長い間ずっと担当してくれているので、私の好きなモノを持ってきてくれる。だからどんな服を持ってきてくれるかも楽しみ」と語った。
「女性アナウンサーの場合、やはり“ママ受け"するファッションになる。細かいところまで見る目が厳しい母親をクリアする時には、フジテレビのアナウンサーは“モテ服"というか、お茶の間受けする服を良く選んでいるなという印象があった」と語る軍地氏。さらに「今はすぐにネットやSNSで批評されてしまう時代なので、どうしても無難な服を選びがちになる」と指摘した。
一方、男性アナウンサーの方は、渡辺アナ曰く、「とにかくキチンとしていることと、目立ち過ぎないことを心がけている」とのこと。この日の渡辺アナのファッションをチェックしてもらうと、「ソフトな感じとカッチリ感のちょうど中間をよく出していると思う。ツイード風のジャケットでカッチリしすぎないところにちょっと派手めのネクタイが似合っている」と述べる軍地氏。渡辺アナもやはりスタイリストにお任せで、「報道番組などだと、もちろんスーツなども選択肢だが、ちょっとカジュアル目の方が視聴者もやすらぐと思う」と述べた。

軍地氏はフジテレビのドラマ『ファーストクラス』のファッション監修も務めたことがある。「ファッションの編集者の話だったので、ファッションもお洒落でないと番組上おかしくなってしまうので、私が入って監修していた。とにかく驚いたのは、ファッションブランドがテレビに服を貸したがらない環境だったこと。ファッション雑誌ならどこでも借りられるモノが、テレビだと急にハードルが高かったので、そこを橋渡ししていった」と当時を振り返る軍地氏。さらに、「やはりテレビは見ている人の数が違うので一度このブランドを着ている、となると非常に影響力がある。今でいうと石原さとみがすごい。彼女が着るだけで売り場が動く、と言われるくらい影響力があるようになってきている。やはりテレビからもファッションの発信性が高くなっている」と語った。
その影響をもろに受けているのが久代アナ。ドラマ『地味にスゴイ〜校閲ガール』で石原さとみが着た洋服を早速購入したという。今はインターネットで、タレント名・番組名・放送話数などを入力すれば、すぐにブランド名が出てくるので、それで毎回買っているとのこと。
軍地氏も、「昔は最後に『衣装協力』として全部テロップで出ていたので、誰がどの服を着ているのか分からなかった。しかし最近はネット上でそれを調査する人たちがいて、その調査隊が番組終了後すぐに、“石原さとみがこのブランドをこのシーンで着ていた"という情報をツイッターなどで上げる。またファッションブランド側も最近は積極的に発信しているので、キーワードを検索するとすぐに出てくる。そしてその影響ですぐに完売してしまうことも良くある」と指摘した。実際、久代アナも放送翌日に買いに行ってギリギリ最後の1点をゲットできたり、売り切れだったりしたこともあったそうだ。
せっかくなのでその久代アナのファッションも軍地氏にチェックしてもらった。久代アナもやはりスタイリストに用意してもらっているが、「ニュースの時は割と地味めな服だが、この番組は渡辺アナがスーツで西山アナが割と大人しめな服を着るので、ちょっと色モノを着るようにはしている」と語った。
「すごくかわいいと思う。スカートの赤、この冬は赤がすごく流行っていたし、キラキラニットもすごくかわいい。ただ“彼ママ服"ではなくてむしろデート服。ママよりも彼に受ける服で、ちょっといいレストランデートとか、女子会の時に向いている。合コンではちょっと引かれる可能性があるので気をつけた方がいい」と指摘する軍地氏。さらに、「キラキラはちょっと抑えてもいいかもしれない。胸元もVネックにするなど変えていってもいいかもしれない。27歳という年齢を考えると、スカート丈を長くした方がいい」とアドバイスした。
西山アナからは、「共演者の邪魔にならないことを考えている。安藤優子キャスターと一緒に夕方のニュースをやっていた時には、互いのスタイリストが相談して、二人が同じ色にならないとか、相手の色を打ち消さないようにとか、お互いにバランスをとってやっていた」という話も出た。これについては軍地氏も、「それは大事なこと。色の被りや地味とか派手とかというのもあるとは思うが、その中で自分らしさを出してほしいと思う」と述べた。さらに、「ルミネに行くとアナウンサー的な服がいっぱいある。伊勢丹だとちょっと高い感じだが、ルミネの方が親しみやすく、女の子も真似しやすいファッションだと思う。夕方5時ぐらいにルミネを行き来するOLを見ていると、アナウンサーっぽい服装の子が結構いる。やはりお茶の間という場所があって、あくまでそこに対しての受け身的な部分は、やはり必要なのかなと思う」と分析した。

「彼ではなく、彼のママに会いに行くのがフジテレビのアナウンサーのファッション、というのは決してほめられてはいないと思う」と語る速水氏。さらに、「それは“無難"ということだし、フジテレビの未来であるとか、テレビとファッションの関係性で言うと、もう少し服で“勝負"していってもいいと思う」と提言した。
テレビとファッションの未来というテーマで、フジテレビが向かう方向性について聞いてみると、軍地氏は、「もっと攻めてもいいかなと思う。80年代・90年代には、女性アナのファッションからもフジテレビのパワーをものすごく感じていた。今、受け身のファッションになりがちなのは、別にフジテレビに限らず、SNSで何でもすぐにあれこれ批評される時代なので、そこをどうしても気にしてしまうのだと思う」と述べた。
その上で、「しかしやはりファッションというのは、主義主張だったり、その人の生き方だったり、今まで育ってきた背景だったり、何を目指しているのかというのを、PRするわけではなく、伝わってくるものだと思っている。だから服を着るということがその人のブランディングにもなってくるというところをもっと理解してもらって、もっと“主張"していってもいいと思う」と持論を展開した。
それはつまり、伝える姿勢をファッションでも表現するということ。軍地氏は、「新しさを伝えるのか、それとももっと伝統的なものを伝えるのか、それとも真面目さを伝えるのかというのも、もっとファッションで置き換えていけると、伝わりやすくなるのではないかと思う」と締めくくった。

最後に軍地氏に速水氏のファッションをチェックしてもらった。唯一スタイリストなしで自ら服を選んでいる速水氏だが、軍地氏は、「ダメではないが、疲れている」と一言。
さらに、「襟の開け方やカフスの開け方が雑。ただそれが速水氏の良さでもあり、襟の開け方などが懐の深さを表している。ちょっと髪のクシャッとしている感じと服のクシャッとしている感じも含めて速水氏なんだなと思う」とやや辛口の分析を加えた。
 


GUEST
軍地彩弓 / 編集者
大学在学中からリクルートでマーケティングやタイアップを中心とした雑誌制作を学ぶ。その傍ら、講談社『Checkmate』でライターのキャリアをスタート。卒業と同時に、講談社『ViVi』編集部でフリーライターとして活動。その後、雑誌『GLAMOROUS』の立ち上げに尽力する。2008年には現コンデナスト・ジャパンに入社。クリエイティブ・ディレクターとして『VOGUE GIRL』の創刊と運営に携わる。2014年に自身の会社である株式会社gumi-gumiを設立。現在は雑誌『Numéro TOKYO』のエディトリアルディレクターや、ドラマ「ファーストクラス」(フジテレビ)のファッション監修など、幅広く活躍。

COMMENTATOR
速水 健朗(ハヤミズケンロウ) 編集者・ライター

 
 

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