新・週刊フジテレビ批評

The 批評対談

テレビは国際ニュースをどう伝えるべきか

DATE : 2016.08.06(土)

CATEGORIES : | The 批評対談 | 報道・情報 |



各地で頻発するテロ事件、イギリスのEU離脱問題、さらに注目のアメリカ大統領選挙など、国際ニュースがテレビを賑わしている。世界はより密接に結び付き、国際ニュースは日本にとってもますます重要な情報となっている。今後テレビはどのように国際ニュースを伝えていくべきか、フジテレビの風間晋解説委員に聞いた。

「今、一番注目しているのは、やはりアメリカ大統領選挙。初めてアメリカ大統領選を取材したのは1992年で、当時はビル・クリントンと“パパ・ブッシュ"の闘いだった。以来、毎回見てきて、今回が7回目の選挙となるが、当時からヒラリー・クリントンを見てきたので、今回は非常に興味があるし、楽しみにしている」と語る風間氏。さらに、「アメリカの場合、選挙の勝敗はもちろん大事だが、それだけでなく、勝敗の中でその時々のアメリカ人の考え方を読み解くカギが埋まっている。そこが楽しい」と述べた。
「今回の場合、アメリカの専門家もメディアも、まさかトランプが共和党の大統領候補に正式に決まるとは誰も予想していなかった。なぜ泡沫候補だった彼が勝ち抜けたのかを我々は読み解かなければいけないし、そこから実は、本当にトランプが大統領になる可能性があるのかどうかということも見ていかなければならない」と述べた風間氏。トランプ大統領誕生の可能性については、「半々だと思う。やはり彼が予備選を勝ち抜けたという事実は非常に重い。一方でヒラリー・クリントンは非常に知名度が高いがいろいろと弱みを抱えている。特に今回の選挙の場合は、“政治のエリートVSアウトサイダー"、あるいは“現状維持勢力VS大胆なチェンジ"というような対立構図の中で、ヒラリーの弱みを考えると勝敗は五分五分だと思う」と分析した。
ヒラリーの弱みの一つが“メール問題"だが、これについて風間氏は、「元々ヒラリーはこれまで20年以上アメリカの政治に関わっている人物で、その歴史の中で、国民が彼女を信頼する事に疑問を抱かせるような数々の事件があった。今回のメール事件はその延長線上にあり、発覚した際に“プライベートのもの"として3万通のメールを削除した上で、残りの2万数千通を国務省に渡したことが、さらなる国民の疑念を生むものになってしまっている」と説明した。
注目の大統領選ではあるが、一方で日本国内のニュースに比べると、どうしても遠い場所の出来事という感じがしてしまう。過去に比べて今回の大統領選の日本での注目度はどうなのか。風間氏は、「とても注目されていると思う。やはりトランプという非常に濃いキャラクターの人物と、日本でも知名度・認知度の高いヒラリーの闘いで、両方とも顔も名前も知っている。特にトランプは言うことも極端なので、これは面白いという感覚はみんな持っていると思う」と語った。

一方でテロ事件などもヨーロッパでは数多く起きている。しかし日本のテレビの報道は動きが遅いのではないか? 昨年のパリ同時多発テロ事件が起きた時、日本では土曜日の早朝だったが、ネットでは既に報じられているにも関わらず、テレビではどこの局も報じていなかった。『9.11』や『湾岸戦争』の時にはすぐに報道特番に切り替えたことを考えると、当時と比べて国際ニュースの報道体制が弱くなっているのではないか。
しかし風間氏は、「決してそういうことはないと思う。ネットとテレビを比較した場合、速報性は圧倒的にネットの方があり、伝え始めはずっとネットの方が先行している。テレビは“装置産業"であり、大きな装置を携えてそれを動かしてニュースを伝える形なので小回りがきかない」と述べた。さらに、「テレビが特番を行う判断基準として、例えば『9.11』や『イラク戦争』のように、“世界史の教科書や歴史書に載るような事件"か、という観点があると思う。また、イギリスの雑誌『エコノミスト』が『9.11』を報じた時には、表紙にワールドトレードセンターに航空機がぶつかる写真を使い、“世界が変わる日"というコピーを添えた。ある意味、そういった感覚でニュースの大きさを測っていくというところが、今もテレビのニュースにはあると思う」と分析した。
とはいえ、速報性という面ではネットだけでなく、CNNなどの報道に比べて、地上波テレビもまだまだ改善の余地があるのではないか。これについては風間氏も、「やはり地上波のニュース番組でもっと速く、そして視聴者に興味を持ってもらえるようなニュースを出していく努力は必要だ。しかしながらCNNのような“24時間ニュース"という媒体としての違いがかなり大きく関わってきている」と述べた。さらに、「24時間ニュースは基本的に何か起こるのを待ち構えている部分がある。そうすると事の本質を捕まえる前に、“とにかく流せ"というような感覚がある。それもニュースの作り手にとってはとても大事なのだが、そういう事をより先鋭にやっているのではないかと思う」と語った。
しかし、昔に比べて海外の記者、特派員、また戦地で活動するジャーナリストがフリーランスの人が多くなったりということがよく聞かれている。人員削減や予算削減が原因とも言われているが、テレビ局はジャーナリズムとしての体力の低下という面で心配はないのだろうか。
「それは心配している通りかもしれない。やはりジャーナリズムもいろいろな媒体を持つようになった。昔は新聞とテレビという感じだったが、今は様々な媒体を持ち、それぞれのジャーナリストが自分の得意な分野、媒体でその情報を発信していけるようになっており、非常に多様化している」と語る風間氏。その上で、「ただ一つ、海外ニュース、国際ニュースを伝える場合に、“大づかみ"に捉えて見せるというのは非常に大事だと思っている。“大づかみ"にして見せると共に、もし必要ならば細部まで見せられるという、その表裏というか両方できるという部分を、自分自身追いかけていきたい。しかし地上波のニュースの場合は、いろいろな時間的制約もあり、また視聴者の嗜好性などもある。何はともあれ、このニュースは一体どういうニュースなのかということを、自分なりに“大づかみ"にしてボンと見せるのが第一かなと思っている」と持論を展開した。
以前と違い、スマホの普及した現在では、現場で撮影した映像がすぐに届けられるようになっている。こういった変化にテレビは対応していけているのか。この点について風間氏は、「対応していこうと頑張っている。世界中に何億台とあるスマホが、ニュース映像を撮影できるカメラとなっている。現地のテレビスタッフが現場に行って撮る可能性よりも、一般の人たちが撮影した映像がニュース映像になる可能性の方が圧倒的に高い。それらの映像を使おうと、どこの国のどのニュース、テレビ局もみんな競争していると思う」と述べた。

昔のように特権的に一部の人が持っている情報を伝えるというよりも、いろいろな情報が各地に出ている中で物事を解説するというのは、“解説"の意味も変わってきているのではないか。これについて風間氏は、「やはりプロの“ニュースマン"としては、まず間違えないということ。それと個人的には、ネットを渡り歩いてコピペで上手く整えられるような原稿は、絶対にダメだと思っている。ネット上にはないニュースの切り口、伝え方というものを、我々報道に携わる一人一人の人間がやらなければいけない」と力強く語った。最後に風間氏は、「先日、中国の南シナ海への海洋進出を巡って国際仲裁裁判所の判決が出た。これを徹底的に無視する構えの中国を、否定的に報道する傾向がある。しかし実はアメリカも国際裁判のように、他人の言う事に従わされるのは大嫌い。なので国際ルールを作るのはとても好きだが、実は条約を批准しないという形で自分が縛られないような事をいろいろとやっている。そういうような事も伝えていきたいと思っている」と締めくくった。


GUEST
風間晋 / フジテレビ解説委員
1959年新潟生まれ 早稲田大学卒後、外務省に入省、ルーマニア赴任などを経て
90年にフジテレビへ入社。外信部でNY特派員、ワシントン支局長、また「ニュースJAPAN」編集長を歴任。 現在「ユアタイム」「グッディ!」でコメンテーターを務める。

COMMENTATOR
速水 健朗(ハヤミズケンロウ) 編集者・ライター

 
 

<< >>
OPINIONS 番組に関するご意見募集中 twitterでつぶやく
<< 2016年08月 >>
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31

ARCHIVES 過去の記事アーカイブARCHIVES 過去の記事アーカイブ