新・週刊フジテレビ批評

テレビウィークリー

”放送への政治介入”問題 テレビはどう向き合うべきか

DATE : 2016.05.21(土)

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先月発生した熊本地震でも伝え方の賛否が問われたテレビメディア。昨今、政治・経済はもちろん、世界規模の不正告発から週刊誌を舞台にしたスキャンダルまで、様々なジャンルでテレビの伝え方が話題になっている。
そんな中、いまだに議論を呼んでいるのが、テレビ放送への政治介入の問題だ。今年2月、衆議院予算委員会で高市総務大臣は、民主党(現・民進党)の奥野総一郎議員の質問に対し、「放送局が政治的な公平性を欠く放送を繰り返したと判断した場合、放送法4条違反を根拠とし、電波法76条に基づく電波停止を命じる可能性があると言及した。また、「政権に批判的な番組を流しただけで業務停止が起こり得るのか」という質問に対し、高市総務大臣は電波停止を含めた電波法の規定を念頭に、「法律は法秩序を守る。違反した場合は罰則規定も用意されていることで実効性を担保する」との考えを示した。

総務大臣のこの答弁を巡り、「放送への政治的介入であり、政治権力に対する放送局の萎縮を招く発言だ」とした議論が巻き起こり、各メディアやジャーナリストらからは様々な声が上がった。ジャーナリストの鳥越俊太郎氏は、「ある種の恫喝だと思う。安倍政権側からのメディアに対する恫喝、脅しである」と発言。ジャーナリストの田原総一朗氏も「全テレビ局の全番組が抗議をすべき。断固抗議」と意見を述べた。
また先月、国際ジャーナリスト組織『国境なき記者団』が発表した“世界の報道自由度ランキング"では、日本は前年の61位から72位に後退。その理由を、「安倍政権がメディアの独立性を脅かしていることや、主要メディアで“自己検閲"が増加していることなどが、日本の民主主義の土台を危うくしている」とした。

この問題について、フジテレビの有識者オピニオンネットワークの『コンパス』で各界の専門家から意見を集めた。まず一連の政治介入問題への報道姿勢に対して、千葉商科大学の常見陽平専任講師は、「メディアは問題の本質に踏み込んでいない。例えばこのような介入が実現した後の世界を提示したら良かったのではないか。既に放送局が去勢された無難な存在になっていないか」との意見を寄せた。
立命館大学の村沢義久客員教授も、「メディアの存在自体が危機にさらされているのに反論が極めて不十分。メディアの独立性が失われれば、太平洋戦争の二の舞と心得よ」との意見。
青山学院大学大学院教授で弁護士の浜辺陽一郎氏は、「メディアが抵抗して批判的な報道を中心に扱っている事はそれなりに評価できる。ただ高市大臣の責任問題になっておらず、うやむやになってしまった印象もある」との意見。
また政治コラムニストの岸本裕紀子氏は、「テレビ報道は独自性が失われ、つまらなくなってきている。政治家が『政治的公平性』を持ち出す意図は、政治に批判的な報道をなくそうという事。“わが番組はこのスタンスで行く"という姿勢の方が信頼できる」との意見を寄せた。

一方で放送法第4条の解釈に関して、日本大学の岩渕美克教授は、「一連の放送法、憲法の解釈は法の趣旨を逸脱したもの。憲法改正や表現の自由ともかかる問題である事を考えてもらいたい」との意見を寄せた。
対して拓殖大学の潮匡人客員教授は、「放送法4条は倫理規定ではなく法規範性を持つ。メディア側の大臣批判は法的論拠を欠く。そもそも政治権力がメディアに介入したと思わない。今後その可能性も想定できない」との意見を寄せた。
また、社会保障経済研究所代表の石川和男氏は、「高市総務大臣の発言は、放送法の個別条項の解釈を述べたにすぎず、問題視されるものではない。メディア側は放送法で規制される側なので、やや過剰に反応しているようにしか見えない」との意見を寄せた。

そして今後のメディアのあり方について、弁護士の山田秀雄氏は、「政治家が都合の悪い放送を、『事実と異なる』や『公平でない』とする判断は恣意に流れる恐れが十分にある。テレビは毅然と民主主義の砦としての自負をもって対応すべき」との意見を寄せた。
コンサルタントのクロサカタツヤ氏は、「『政治』ではなく『行政』とメディアの関係性について、法制度や法執行の観点から見直してみることが必要。その関係性に“隙あらば"の“隙"があるかもしれない。それを浮き彫りにしたのが放送法第4条だったのではないか」との意見を寄せた。
また立教大学の砂川浩慶准教授は、「テレビの『表現の自由』問題は、テレビ局のみでなく視聴者の『表現の自由』に関わる問題であることをきちんと解説し、視聴者を“味方"につけるべき」との意見を寄せた。
さらに学習院大学の石澤靖治学長も、「局自身が『メディア批評番組』を大きく押し出すべき。自らを厳しく見つめて検討する姿勢こそが『信頼』となり、政権から論争を挑まれた場合に、国民とともに跳ね返す力になる」との意見を寄せた。

こういった状況に対し、フジテレビは次のような見解を示している。
「放送法の精神や憲法を踏まえれば、“公権力による介入は極めて抑制的であるべき"という考えに変わりはありません。我々放送事業者が自らを律して、誤った放送をしない、そして介入する隙を与えないように努めることが重要で、問題があった場合には『番組基準』や『番組審議会』『訂正放送』など、放送事業者自身の力で解決することが基本と考えています。高市大臣の発言で放送人が萎縮することはありませんし、これまで通り放送法にのっとって放送するという姿勢は一切変わりません」


コメンテーターの音好宏氏は、
「萎縮はない、というのはやはり一つ一つの仕事で示していくしかない。メディア、放送局側は、現場が忖度などせずに毅然とした態度でその役割を全うすることが大事。西側先進諸国では、マスメディアに求められる役割の1つに“権力の監視"がある。政治権力に対する監視という重要な役割を果たすことが、世界の中で我々が民主主義国家だと示すことになる。また、他の先進諸国では独立行政委員会が放送通信行政を担っているが、日本の放送制度はかなり緩やかで、それ故にBPOという自分たちで自主自律をするという組織を持っている。自分たちを律するというのは非常に重要であり、問題が起きた時に自分たちの手で解決すると同時に、現場も脇を締めて問題が起こらないようにすること、そして自分たちの役割、社会的機能をしっかりと担っていくことが大事だと思う。それができないと“本当に民主主義は大丈夫なのか"と諸外国からも言われることになる。ぜひ自分たちを律し、自分たちの問題は自分たちで解決できるんだと示し続け、なおかつ毅然とした態度で報道活動、表現活動を行うことが大事だと思う」とコメントした。

 

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