新・週刊フジテレビ批評

The 批評対談

2016年”春ドラマ”徹底批評!

DATE : 2016.05.14(土)

CATEGORIES : | The 批評対談 | ドラマ |



この春も各局合わせて約30本もの“春ドラマ"がスタートした。そこで今回は恒例企画として、「週刊ザテレビジョン」編集長代理の内山一貴氏、「日刊スポーツ」芸能記者の梅田恵子氏に、コメンテーターでもあるドラマ解説者・木村隆志氏を交え、専門家たちが今期のドラマをどう見ているのかを聞いた。

「今期の傾向として、出逢い、婚活、仕事など、春らしく“何かを始める"“新生活が始まる"といった勢いのある明るいドラマが、各局ともに増えている」と語る木村氏。特に今回、イチ押しの注目ドラマとして挙げたのが、何と三人揃ってTBSの『重版出来!』だ。「いわゆる業界モノのお仕事ドラマで、コミック編集部が舞台なのだが、編集部・営業部・書店・漫画家・デザイナーなど、関係者個々のキャラクターがしっかりと立っていて彼らの背景や人間関係の絡み合いもしっかり描かれている。変に狙ったり、対立構図を作ったりということがなくて、しっかりと“仕事っていいな"と考えさせてくれ、しかも背中を押してくれるような、素晴らしいドラマ」と木村氏は絶賛。
梅田氏も「どうしてもお仕事ドラマの女性キャラは、荒唐無稽な高飛車キャラかドジッ子の成長譚になりがちだが、このヒロインはすっきりとメンタルが自立していて溌剌さがある。だから同じ働く女性から見て共感できるし、仕事を頑張ろうという風に元気になれる作品。1話完結でハズレがなく楽しめる」と語った。また同じ編集者である内山氏も、「部数を決める部決会議の緊迫感もリアルに描かれ、正に共感。劇中では重版が決まって喜ぶ編集部員みんなが行う儀式的なものがあり、ウチの会社でも取り入れようかと思うくらい。本当に共感できるし、ヒロインの周囲の男性キャラがみんな立っていてとても面白い」と語った。
しかし視聴率的には苦戦しており、前週の『ドラマ視聴率ランキング』では9.1%でランキングは8位。しかしこれとは別に『ドラマ“視聴熱"ランキング』というモノも内山氏から紹介された。
これは『ザテレビジョン』が4月から新たに掲載している、ドラマを視聴率とは違った尺度で測ってみようという試みで、角川アスキー総合研究所の『ツイラン』というサイトを使い、一週間の内、そのドラマのタイトルが何回つぶやかれていたかをランキング化したもの。基本的にはドラマのタイトルのツイート数で、どれだけツイッターの中で話題になっているかを知ることができる。この『視聴熱ランキング』によると、『重版出来!』は4位でツイート数も30,004回。この回はちょうど新人漫画家を発掘するというエピソードで、ツイッターの中でも注目を集め、前週よりもつぶやきが増えていた。

フジテレビの月9ドラマ『ラヴソング』について聞くと、木村氏は「大抜擢されたヒロイン・藤原さくらの成長物語として見るとものすごく面白い。しかし超大物の福山雅治との二十何歳差の恋愛というところに視聴者が引っかかってしまい、成長物語を素直に見られないのではないか? そこが伝わっていないところにまずつまずきがあった」と分析。梅田氏も同意見で、「歳の差恋愛ではなく、もっと傷だらけの師弟愛という方向で見たいと思う。新人の藤原さくらの初々しく粗削りな魅力もきちんと出ているし、歌の選曲も素晴らしい」と述べた。
しかし視聴率的には8.5%でランキングは10位。視聴熱データでも9位という厳しい状況だ。これについて内山氏は、「放送前の宣伝で、“歳の差恋愛"“夢破れた人の再生"といったいろいろなキーワードがあったが、一番の売りは何なのかが伝わりにくかったと思う」と分析。さらにギリギリまでヒロインの吃音(きつおん)という設定が伏せられていた点については、「実際見てみたらすごく骨太でしっかりと描いているのだが、思ったより重いというかヒューマン寄りの感じがした。事前のイメージとちょっと違っていたという印象を受けた」と述べた。
木村氏も「大抜擢のヒロインも大物の福山も番宣に出せず、他のキャストが出てきてもどうしても違和感が残る。だったら他のPR方法もあるはず。ドラマが始まる前から小さな部分で損をしているのがもったいない。第1話にチャンネルを合わせるところに至らなかったのが最初のつまずきだと思う」と指摘した。さらに梅田氏は、制作発表と同時に主題歌を発表したことについて、「もうちょっと先に出してネットで話題づくりをして盛り上げるというのが最近のパターンなので、やはり明らかに展開が遅い。もっと早く仕掛けてドラマ内容ももう少し詳しくPRしても良かったと思う」と述べた。さらに木村氏は、「藤原さくらだけでなく、脚本家もこの作品がデビュー作。大抜擢という素晴らしいポイントがあるので、そこを押してPRしたらもっと良かったと思う。とはいえ、こういったドラマを作ろうとするフジテレビの意欲はすごい。ただそれを素直に受け取ってもらえない状況があるのが勿体ない。面白いドラマなだけに残念」と語った。

「日本テレビの『世界一難しい恋』、TBSの『私 結婚できないんじゃなくて、しないんです』(通称:『できしな』)に代表される高スペックなのに恋愛弱者という主人公が、すごく共感を得ているのだと思う。そういう部分で、“ヘタ恋"というのがキーワードになっている」と語る内山氏。特に『世界一〜』は視聴率も12.2%と善戦しており、視聴熱では第1位となっている。「この2つに共通しているのは恋愛指南術を描いている所。これが非常に見やすく、新しく感じる」と内山氏は指摘した。
“ヘタ恋"の定義には、フジテレビの『早子先生、結婚するって本当ですか?』も当てはまるが、内山氏は「主人公の松下奈緒が凛として見えるので、『世界一〜』や『できしな』よりも共感できない気がした」と述べた。さらに梅田氏は、「元々4コマ漫画の『早子先生〜』は連ドラにするのは難しい。主人公が先生なのだが、学校モノなのか婚活モノなのか、それともホームドラマなのか、何のドラマなのかつかめないままでちょっと食い足りない感じがした。どこにもキレイに収まっているのだが、どれか一つに絞った方が見やすかったと思う。『できしな』の方は、主人公・中谷美紀が藤木直人から受けるスパルタ婚活指南が、ものすごくテンポがあって面白い。それと比較すると一世代前の婚活ドラマに収まっている気がする。『世界一〜』も『できしな』も、より実践的でボロボロになって頑張る姿が、婚活ドラマの第2ステージに来ているように感じる。やはりそれと比べると見劣りしてしまった感があるのが残念だった」と分析した。

TBSの深夜枠『毒島ゆり子のせきらら日記』は主演の前田敦子の体当たりの演技が話題となっている。これについて木村氏は、「深夜ドラマだが視聴率もだんだん上がってきている。前評判は決して高くなかったがオリジナルドラマをしっかりと作っており、ヒロインが政治記者で、恋愛依存症で、裏切られるのが嫌で二股をかける。それが政治の世界と全く同じで、そこをリンクさせるという結構緻密な作りをしている。しかもスタッフたちが若く、チャレンジ精神がすごくある。この深夜枠はまだ3作目だが、毎回攻めて作っている。映画界や演劇界からどんどん脚本家を起用している注目の枠」と語り、さらに「TBSは深夜で思い切った勝負をして若手を育成しながら、ゴールデン、プライムタイムに投入していくという戦略がはまりつつある」と分析した。
梅田氏も同様に「定期的に開かれる記者懇親会の時に、TBSの編成局長自ら記者のところを回ってこの枠をPRしている。それだけ力を入れているという熱意がこちらにも伝わってくる。実際、チャレンジしている作品も多く、期待の枠でもある」と語り、木村氏も「今の話こそ『重版出来!』に近い。本当に仕事に前向きな姿が見られるからこそ、そういうモノがつくれるのかと感心してしまった」と述べた。「視聴率的にはまだそれほど目覚ましい結果は残していないが、編成局長は“まだ我慢の時期、育てる時期。それでも若い人が頑張っているので見て欲しい"とかなりの情熱を持って言っている。自分もそういう情熱は勉強したいくらい」と梅田氏は語った。

今期、フジテレビは日曜夜9時にドラマを復活させた。その大きなチャレンジとなる『OUR HOUSE』について聞くと、「TBSの日曜劇場にぶつけることは、ドラマ好きの視聴者はどちらを見たらいいのか迷う気持ちが出てくるかもしれず、ちょっと残念な気もする。その分、色を出して欲しいというところで非常に期待していたのだが」と語る内山氏。
梅田氏は、「2年ほど前にバラエティ枠にして、今回またドラマ枠に戻したのだが、どちらかに腰を据えて、我慢して若手を育ててみようというのも必要ではないか?作品が良ければ『マルモのおきて』のように爆発的ヒットもあり得るので、コツコツといい作品を作り続け、ドラマの枠として今度こそ成功させて欲しい。しかしやはり日曜劇場は強いので、そこにぶつけてくるというのは視聴者としてはちょっと迷うところではある」と述べた。また内容面についても、「芦田愛菜とシャーロット・ケイト・フォックスのバトルには相当期待していたのだが、自分としてはちょっと乗れないやり取りもあった。もうちょっとイマドキのようにテンポよく、もうちょっと明るく、日曜の夜なので月曜日へのステップになるような、そういう感じで見たかった」と語った。さらに内山氏も「やはり芦田愛菜のセリフが、イマドキの中学生の言葉としては違和感があった。そこが狙いだとは思うが、少しリアリティから離れてしまっている気がする」と指摘した。
今後の展開に対しての期待を聞くと、内山氏は、「もちろん何か絶対に仕掛けているはずで、そこがこれから明らかになってくると思う。そこに制作陣の思いがあると思うので、期待したい」と語り、木村氏も「何かしら終盤に仕掛けてくるのは間違いないが、もう一つ、新設枠なので最後に今後どういう枠にしていくのかという色をきちんとつけないと、とてもじゃないが日曜劇場には対抗できない。ホームドラマと決めるなら、それを見てくれるお客さんを集めながらやっていく方がいいと思う。終盤に向けてその先鞭を脚本の野島伸司氏がつけてくれる事に期待している」と述べた。

一方、同じ日曜9時のTBS『99.9〜刑事専門弁護士〜』は高視聴率で話題にもなっている。これについて木村氏は、「自分は全然面白いと思わない。謎解きなどは極めて普通の刑事モノに近く、だから見やすいのだと思う。ただ登場人物のキャラクターがすごく明快でちょっとしたところが面白い。見やすさもあり、松本潤、香川照之という俳優の引力もあるので、瞬発的な視聴率には繋がりやすい。ただ本当にドラマ好きな人がこのドラマを好きかどうかは分からない」と分析した。
梅田氏も同様に、「やはり99.9というからには、残り0.1%をひっくり返す醍醐味が一番の見どころだと思うが、肝心のトリックが幼稚に見えてしまい、見ごたえ的には辛い。むしろ弁護士モノとしてはテレビ朝日の『グッドパートナー』が抜群にいい。福田靖の脚本も本当に面白いし、竹野内豊と松雪泰子のコンビネーションが実に絵になっている。法律モノとしても身近なテーマがいっぱいあって楽しめるし、本当にオススメ」と語った。
一方内山氏は、「尖っているが仕事には妥協しない主人公が、周りを振り回しながらも真実を突き止めていき、その仲間たちも一緒にやっていく、という鉄板的な構成。これは老若男女を問わず絶対に見やすい。それがやはり数字に繋がっている気がする」と述べ、木村氏も「視聴率を取りに行く戦略のうまさが確実にある」と指摘した。

フジテレビでは今期、話題となっている『僕のヤバイ妻』、そして『火の粉』というサスペンスというジャンルにも挑戦している。これについて木村氏は、「自分は『火の粉』の方が好き。最近のドラマは必ず改修してスカッさせるような物が多いが、この作品はそういうことをせず、ストレスをどんどん蓄積させるような連ドラらしいサスペンス。やはり東海テレビがやってくれたなと思う。ユースケ・サンタマリアが本当に怖く、非常にいい演技で見ごたえがある」と述べた。また『僕のヤバイ妻』については、「設定は“出オチ"に近く、1話で大体分かって後はどれだけ怖がらせるかというサスペンスのやり方なのだが、そこをどこまで追及できるか。妻役の木村佳乃をどう描くか、周りの人物をどう不気味に描くか、今、それをどう見るかで評価が分かれていると思う」と分析した。
映画『ゴーン・ガール』に似ているという指摘もあったが、内山氏も「自分も1話はそう感じたが、やはり展開が面白いので惹きつけられてしまった。映画と似ているというところを置いておけば、視聴者を惹きつける力はきっとある」と語った。
今期のフジテレビのドラマについてかなり厳しい意見もあったが、これから終盤に向けての展望を聞くと、木村氏は「見逃した番組でもオンデマンドもあるし、価値あるモノなので、是非振り返って見てほしい」と締めくくった。

GUEST
内山一貴 / 株式会社KADOKAWA「週刊ザテレビジョン」編集長代理
1977年生まれ、成蹊大学卒 2004年に滑p川書店(現KADOKAWA)入社。
記者、副編集長を経て2015年より「週刊ザテレビジョン」編集長代理に。

梅田恵子 / 「日刊スポーツ」芸能記者
東京都出身、法政大学卒 1989年に日刊スポーツ新聞社入社。主に芸能を担当、2011年からウェブサイト「ニッカンスポーツ・コム」で芸能コラム「梅ちゃんねる」を連載。脚本家・市川森一作品の大ファン。

COMMENTATOR
木村隆志 / ドラマ解説者

 

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