新・週刊フジテレビ批評

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球団担当記者ってどんなことをしているの?

DATE : 2016.05.07(土)

CATEGORIES : | ハテナTV | スポーツ |



スポーツニュースで伝えられる様々なプロ野球情報。多くのスタッフが携わっている中で、監督や選手に最も近い距離で取材しているのが、プロ野球の球団担当記者だ。1976年に始まった『プロ野球ニュース』の歴史とともに、球団や選手との繋がりを受け継いできた球団担当記者。今回は新人とベテランの2人の女性球団担当記者の1日に密着取材した。

試合開始5時間前、まずは球団担当記者歴8年のベテラン・大森千恵子記者と合流。2008年、埼玉西武ライオンズの球団担当から始まり、横浜ベイスターズ、千葉ロッテマリーンズを経て、今年は再び横浜DeNAベイスターズを担当することになった。フジテレビでも延べ4球団を担当するのは大森記者しかいない。
そしてもう一人は球団担当記者歴3カ月の片野坂恵理記者。今年2月の春季キャンプから東京ヤクルトスワローズの担当になったばかりの新米記者だ。片野坂記者は家を出てすぐにスポーツ新聞を購入。選手の個人成績やチーム状況が詳しく載っているスポーツ新聞は記者にとって必需品だ。

神宮球場に向かった片野坂記者は、まず室内練習場で真中満監督の囲み取材。ちょっと遠慮がちでまだ直接質問をぶつけられるほど度胸はない。しかしフジテレビのCS放送で中継があるため、実況担当の向坂樹興アナが監督への質問をリードしてくれる。その一言一句を必死にメモする片野坂記者。
囲み取材が終わると続いて選手の元へ。やはりここでも遠慮気味だが、本人いわく、「自分からはグイグイいけないが、話しかけてもらった時にはここぞとばかりに話す」とのこと。この日は話しかけてくれた川端慎吾選手に球場までいわゆるぶら下がり取材。そんな片野坂記者について、ヤクルトの中村悠平選手は、「最初は緊張している感じだったが、今はもう完全に慣れてきて、仕事も一生懸命やっている感じがすごく分かる」と語った。
この日、フジテレビの田淵裕章アナもプロ野球中継の手伝いのため神宮で取材中。球団担当について聞くと、「いろいろと取材をしてくれ、ネタも教えてくれるので、実況担当としては非常に助かっている」と述べた。さらに解説者の齊藤明夫氏は、「男ばかりの世界に新人の若い女性が入ってきて、1カ月間のキャンプ取材、よくもったと思う。意外と女性の方が熱心なのかなと思う時もある」と語った。

一方、横浜スタジアムでもベテラン大森記者が取材開始。選手たちとまるで友達のように会話を交わす大森記者だが、DeNAの三浦大輔選手は、「近いけどいい距離感を保っている。こちらもついポロッとしゃべりすぎる時もあり、そういうのを引き出すのがうまい」と語った。
選手との距離感を大切にする大森記者。ラミレス監督の囲み取材で出遅れてしまったが、何と他の記者が譲ってくれて、いつもの定位置である監督の右隣へ。
さらに裏方のチームスタッフにまでこまめに声を掛ける大森記者。元選手で現在は球団の広報担当の渡辺雅弘氏はルーキー時代からの顔なじみで、「昔から知っているので、できるだけ協力はさせてもうおうと思っている」と述べた。
地道に多くの選手を取材してきたからこそ築かれた大切な人間関係。それは担当するDeNAだけでなく、対戦相手の中日ドラゴンズまで。中日ベンチに向かった大森記者に気づき、声をかけてきたのは谷繁元信監督。バッティング練習の最中にも関わらず、和気あいあいと話し込む。たとえ放送に直接繋がる取材でなくても、監督や選手とコミュニケーションを取ることも、担当記者として重要な仕事なのだ。

試合開始2時間前、片野坂記者が慌ただしく向かった先もヤクルト側ではなく、対戦相手の広島カープのベンチだった。この日は広島の新井貴浩選手が2000本安打達成まであと1本ということで、現場では記録達成に備えて『ユアタイム』のスポーツコーナー担当・田中大貴アナウンサーが試合前にリポートを収録。この日は中継映像に加えて、新井選手を押さえるため、バックスクリーン横と1塁側に2台のカメラが準備された。
試合開始30分前、片野坂記者はバックネット裏の記者席でスタンバイ。野球経験のない彼女の必需品が一冊のノート。経験豊富な先輩記者の過去のニュース原稿をまとめたもので、これを参考に原稿を書いているのだ。さらに担当記者は取材だけでなく、各局との映像素材に関する段取りをつけるのも重要な仕事。この日は特に新井選手の記録達成がかかっており、連絡に追われて食事をする暇もない。

同じ頃、ベテラン大森記者は横浜スタジアムの関係者食堂で食事休憩しながら、カメラマンに撮影のポイントを伝えていた。この日はホームラン7本で並ぶDeNA筒香選手と中日ビシエド選手、両チームの4番同士が注目ポイント。
そして試合開始1時間前、かなりの余裕を持ってバックネット裏最上段の記者席に入る大森記者。1塁側ベンチ横のカメラマンには、無線で試合映像の撮り方まで細かく指示する。また試合開始直前には『ユアタイム』スポーツ担当のチーフディレクターと編集マンに、電話で事前に試合のポイントを伝えておく。
そして午後6時、試合開始。試合中はスコアブックをつけながらカメラマンに指示する一方で、パソコンで他の試合のチェックも欠かさない。

さて試合開始直前の神宮では、CSプロ野球ニュース担当の久代アナも合流し、同期の片野坂記者に密着取材を試みる。忙しかった電話対応も落ち着き、試合に集中する片野坂アナ。するとこの試合注目の新井選手が、第2打席でついに2000本安打を達成! となるとトップニュース扱いで時間も1分30秒になるので、まだ5回途中ながら予定稿を書き始める片野坂記者。
一方、横浜スタジアムは8回裏、中日の攻撃。4番ビシエド選手がホームラン! 狙い的中の大森記者はすぐさま電話でVTR構成を伝える。

神宮も8回裏が終わったところで片野坂記者は記者席から下へ向かう。試合終了後すぐにグラウンドに出られるよう、9回の最後のイニング前には下で待機するのだ。
そしてこの日の試合終了後は、ヤクルト側には目もくれず、記録を達成した新井選手の囲み取材に向かった。
午後9時、現場での仕事を終えた片野坂記者は急いでタクシーでフジテレビへ。車内では編集マンに電話で試合の使いどころを伝え、ナレーション原稿を仕上げる。
横浜スタジアムの大森記者も最終回を前に記者席を出る。試合終了後は敗れたDeNAラミレス監督の囲み取材へ。構成は中日のビシエド選手メインなのでオンエアはされないが、これも大事な取材だ。そしてすぐにビシエド選手に取材後、編集マンに電話で狙い通り撮れているはずの映像を伝える。
その後すぐさまフジテレビへ。大森記者も移動するタクシーの中で、この日初めての原稿を書き始める。

本番まであと2時間、先に局に戻った片野坂記者はチーフディレクターに原稿チェックをしてもらう。しかしVTR構成とナレーションに直しが入れられる。すぐさまその原稿を持って編集マンのところに急ぎ、直し部分を再編集する片野坂記者。
一方、大森記者は本番1時間前に到着。落ち着いた様子で原稿をチーフディレクターのところに持っていき、こちらは変更なし。そして編集マンとも映像の確認。事前に連絡して作ってもらっていたVTRとナレーション原稿の尺も合い、OK。田中大貴アナとの読み合わせも終わり、本番30分前には手が空いてお菓子をつまむ余裕まで。
かたや片野坂記者は、編集で映像の直しを何度も繰り返し、読み合わせが終わったのは本番10分前だった。
その後、『ユアタイム』のスポーツコーナーがスタート。トップ項目で片野坂記者のヤクルト×広島戦のVTRは無事オンエア。大森記者のDeNA×中日戦もカメラマンに指示した狙い通りの映像がバッチリ使われていた。こうして2人の長い1日が終了した。

最後に球団担当記者の役割について聞くと、片野坂記者は、「誤報を流してはいけないし、1個1個のワードを自分の解釈で書きやすいように書いてはいけないので、とても重い役割」と語った。一方大森記者は、「みんなが取材に行きたいという思いを、全部私たちが預かって球団と話をするという、そういう使命感は常に持っている。それがなくなると球団の信頼も失い、ちゃんとやりとりができなくなる。現場に行ったらフジテレビ代表でグラウンドにいるという気持ちを常に持ってやっている」と語った。
フジテレビ代表として球団との交渉のような事も、球団担当記者の重要な役割である。また球場はもちろん、選手のバラエティ出演のアテンドをしたり窓口になることもある。球団担当記者の多岐にわたる毎日の仕事の積み重ねによって、スポーツ中継やスポーツニュースは成り立っているのだった。

コメンテーターの江川紹子氏は、
「DeNA三浦選手が言っていたように、“いい距離感"と言う事がとても大事だと思う。スポーツだけでなく、警察取材や政治家の取材など、すべてに通じると思う。取材対象に食い込むのは大事だが、のめりこんで一体化してはいけない。そこのけじめをきちんとつけているのだと思うし、三浦選手の言葉は最高の褒め言葉だと思う。また新人記者の一生懸命さと努力、真剣に向き合う姿勢はすばらしいと思う」とコメントした。


 

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