新・週刊フジテレビ批評

The 批評対談

大ヒット脚本家3人 ドラマ放談

DATE : 2016.01.16(土)

CATEGORIES : | The 批評対談 | ドラマ |



名作と呼ばれる数々のドラマには脚本家たちの力がある。彼らはストーリーを紡ぎ出し、台詞を武器にドラマに命を吹き込んできた。しかし現在、視聴率の低迷やマンガや小説などの原作モノの増加など、環境の変化も起きている。そこで今回は新春スペシャルとして3人の人気脚本家をゲストに迎え、執筆の裏側やドラマの現状について聞いた。

「仕事場はあるが喫茶店やファミレスなどをハシゴして書くことも多い」と語るのは、『半沢直樹』『下町ロケット』の脚本を書いた八津弘幸氏。一方、『美女か野獣』『学校のカイダン』の吉田智子氏は、「一万冊の本に囲まれた仕事部屋で書いている」という自宅派。ユニークなのは『リーガル・ハイ』『デート〜恋とはどんなものかしら』の古沢良太氏で、「仕事部屋の中で歩きながら脚本を書く。締め切った室内でシーンの最初から最後まで自分で演じてみて、それから書く」と実演付きで説明した。

それぞれに自分の作品以外で面白かったドラマを挙げてもらうと、『リーガル・ハイ』と『あまちゃん』を挙げたのが八津氏。同じ堺雅人主演の『リーガル・ハイ』の1期と2期の間に『半沢直樹』があり、「結構、古沢フリークだったので、逆に古沢氏が『わずらわしい』と言ってくれた記事を見て、ちょっと嬉しかった。『あまちゃん』は『半沢』と同時期にやっていて、まるで毛色が違うので、気分転換によく見ていてすごく楽しめた」と述べた。
逆に『半沢直樹』を挙げた古沢氏。「『半沢直樹』の大ヒットを受けて、『リーガル・ハイ』の2期では“何とかしなきゃいけない”と浮足立ってしまったという印象が残っている」と笑いを交えて語った。また韓国ドラマ『応答せよ1997』も挙げ、「たまたまテレビで見てすごく心奪われた。これを見てラブストーリーを書きたいと思い『デート』というドラマを書いた」と語った。
一方、吉田氏は『LOST』『ブレーキングバッド』『ファーゴ』『シャーロック』と海外ドラマばかりを挙げ、「日本のドラマとは全く違うキレてる感じがいい。トップシーンからドラマ展開の転がし方も非常に面白い。参考にさせてもらっている」と述べた。

テレビ局によっての特色や変化について、古沢氏は、「フジテレビの仕事が多いが、プレッシャーも口出しもなく、自由にのびのびやらせてもらっている」と述べた。
八津氏にもTBS、特に『半沢直樹』『下町ロケット』を作った“福澤組”(ドラマ監督・福澤克雄氏の制作チーム)について聞くと、「『半沢』の時は、高視聴率を狙わずにいいモノを作るということを実践した。また女性の視聴者は諦めていたが、想定外に多くの女性が見てくれた。脚本を作る上でも、そこにすり寄っていかずに面白いと思ったモノをどんどん作っていくということ。ただ物理的には、なかなか家に帰してもらえないなど厳しい部分もある。直しのディスカッションもかなりしており、時にはプロデューサーと監督の調整役のような感じもある」と語った。
『学校のカイダン』で日本テレビの仕事をした吉田氏は、「日本テレビはものすごく自由だと思った。若手プロデューサーが一人で担当し、当時まだ無名だった広瀬すずを主役にしたいと訴えて上層部を説得し、結果的に実現させた。若い人なりの思い切りの良さとドラマに対する熱意が感じられて非常に面白かった。また局の上層部も若いプロデューサーに対して“おまえがやりたいならやってみろ”というスタンスで、まるで昔のフジテレビのような感じがしてすごいなと思った」と当時を振り返った。

日頃、顔を合わせることの少ない3人の脚本家同士、それぞれに質問してもらった。まずは吉田氏から八津氏と古沢氏へ、『プロデューサーと意見が合わない時、どうしますか?』という質問。
八津氏は「一回は逆らってとりあえず書いてみる。それでもやっぱりダメと言われたら、従う時もあるし、“いや監督がこう言っている”と言ったりする。その逆に、監督と意見が合わない時には“いやプロデューサーが〜”と言ってみることもある」と“作戦”を明かした。逆に古沢氏は「自分は意見されるとすぐに“そうですね”と従って、後になって後悔するタイプ。むしろ意見が合わず対立するという状況に憧れる。やはりオリジナルで書いていると、これを面白いと思うのは自分だけではないかという不安が常にあり、他人の意見にすごく従順になってしまう」と語った。
八津氏からは、『台本の1文字目を書き出すコツってありますか?』という質問。これについては吉田氏も、「自分も同じ。冒頭の1行で何時間でも悩む」と述べ、古沢氏も同様に「仕事場でうろうろして、もっと面白いアイデアが出るのを期待するが、結局出ずに時間に追い込まれて書き始める」と述べた。
古沢氏からは『半沢直樹』で記録的な視聴率を叩き出した八津氏に、『視聴率40%とるとどうなりますか?』という質問。八津氏は「正直、自分的にはピンと来なかった。初回に19%取った時は良かったと思ったが、30%を超えた後半は実感がなかった」と振り返った。さらに古沢氏は吉田氏に、『若い人の言葉や文化をどうやって学びますか?』と質問。これに対して吉田氏は、「親戚の子たちに会ったり、なるべく若い人の話を聞くようにしている。またバラエティ番組はすごく参考になる」と述べた。

『半沢直樹』以降、ドラマの登場人物に特に“濃い”キャラクターが増えており、またそれが求められる傾向がある。これについて八津氏は、「原作モノを多くやっているし、同じチームでやっているので当然“濃いキャラ”を求められる。元々そういうものが得意だと思うので、求められなくてもそうなる可能性はある」と述べた。吉田氏もまた、「“濃いキャラ”は正直ここ何年か、プロデューサーから要求されることは多い。後は決めゼリフ。なるべく一話完結で決めゼリフがあってスカッとするような、というリクエストはあると思う」と語った。これに対し古沢氏は、「そういうのがブームなら、そうじゃないモノを作ろうと思う。一つ当たったから同じようなモノを作るのではなく、違うモノで当てようと思ってこそだ、と思う」と述べた。

原作モノとオリジナルに関して聞くと、八津氏は「一脚本家としてはもちろんオリジナルを書きたいという思いはある。一方で原作モノの仕事であれば、いかにそれを面白くするか、どうやって原作の良さをドラマの脚本として作り上げるかという、技術的な面白さもある」と語った。逆に古沢氏は、「原作はファンもいるし、傷つけられないという怖さもある。オリジナルの方が気持ちとしては自由にできる。オリジナルは時間がかかるが、求められている部分もあるので、がんばってやっていきたい」と述べた。

ドラマの視聴率について聞くと、八津氏は「視聴率をとるに越したことはないが、とらなかったからそのドラマがダメということはない。視聴率を指標にドラマの良し悪しを判断されるのはどうなのか。とはいえ、制作者側がそれを目指して頑張れるものは必要。視聴率に代わる指標が出てくると一番いいと思う」と分析。吉田氏もまた、「視聴率という指標は時代と合っていないのではないかと思う。デジタルとかインターネットが普及ししている中で、それでいいのかという気はする」と述べた。
一方、古沢氏は、「頑張っているスタッフやキャストのためにも視聴率はとりたい。どうしたらより多くの人が見てくれるかを常々考えている」と語った。ちなみに今、何%いけば視聴率をとったと思えるか尋ねてみると、3人とも答えは“15%”と述べた。

その他に何かこんな指標があれば脚本家として嬉しいというものはないか? と質問すると、3人ともツイッターを挙げ、八津氏は「番組終了後に見て、自分で自分のテンションを上げるようにしている」と述べた。さらに吉田氏は「最初は否定的だったツイッターの感想が、ドラマの進行につれて変化していき、最後に盛り上がるというのが非常にうれしい」と語った。古沢氏もまた、「褒めていそうなモノを積極的に読むが、けなされた時にはまた見返してやろうという気持ちも湧いてくる。そういう批判的な声の方が実はありがたいのかもしれない」と語った。

最後に、今後、どんなドラマを作っていきたいかについてそれぞれに語ってもらった。
八津氏は、「オリジナルで、何か“爪あと”を残せるような作品を作れればいいなと思っている。基本的にかっこいいキャラクターをいつも書きたいと思っているので、そういうキャラが活躍するドラマを書きたい。それが3年後、5年後まで憶えていてもらえるようなモノになったら最高だなと思う」と述べた。
古沢氏は、「たとえ視聴率が低くても、どんな視聴率でも愛情を持って、見てくれる視聴者に対して誠実に作り通すということが大事だといつも思っている。そして今後は“世界に通用するような日本発のドラマ”を作りたい。“日本製のドラマが一番面白い”と世界中の人が言ってくれるのが夢だ」と熱く語った。
そして吉田氏は、「カッ飛んでていいのかなと。視聴率が3%くらいしかとれなくても、何か新しい物を生み出したい。数限りない失敗を重ねた上で大ヒットが生まれると思う。守りに入らないでどんどん新しいモノを作っていくことが大事だと思う」と締めくくった。


GUEST
古沢良太 / 脚本家
2002年「テレビ朝日21世紀新人シナリオ大賞」で大賞を受賞し、脚本家デビュー。
『ゴンゾウ伝説の刑事』で第27回向田邦子賞受賞。代表作:映画『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズ『キサラギ』『エイプリルフールズ』、テレビドラマ『相棒』『鈴木先生』『リーガル・ハイ』『デート〜恋とはどんなものかしら〜』、舞台『趣味の部屋』『悪童』『幻蝶』など。

八津弘幸 / 脚本家
1995年〜99年フジテレビドラマ制作のアシスタント・プロデューサー
2001年〜04年(有)オフィスワンダーランド。テレビドラマ、漫画原作、その他出版物の執筆に携わる。
連載漫画の原作で培った構成力とエンターテイメント性をベースに、『半澤直樹』『ルーズヴェルト・ゲーム』、映画『イキガミ』のような重厚な人間ドラマをはじめ、サスペンス、ミステリーといった刑事ドラマ、裁判ドラマなどに専門知識があり、得意とする。また『シュガーレス』『ランナウェイ』『RESCUE』『クロヒョウ』のような、男くさいハードボイルドな世界観も得意。一方で、笑って泣ける、心温まる人情ドラマも多数手がけており得意分野である。

吉田智子 / 脚本家
東京都出身。大学卒業後、広告制作会社に勤務。コピーライターから脚本家に。テレビドラマと映画の脚本を執筆。代表作:『美女か野獣』『全開ガール』『学校のカイダン』、映画『アオハライド』『ホットロード』『カノジョは嘘を愛しすぎてる』『僕等がいた(前後篇)』『奇跡のリンゴ』『岳-ガク-』。


COMMENTATOR
木村隆志 / ドラマ解説者
1973年生まれ。コラムニスト・テレビドラマの評論・タレントインタビュアーなど、雑誌やウェブを中心に活躍。
1日のテレビ視聴は20時間!(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品をチェックする重度のウォッチャー。
また、取材歴1000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。




 

<< >>
OPINIONS 番組に関するご意見募集中 twitterでつぶやく
<< 2016年01月 >>
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

ARCHIVES 過去の記事アーカイブARCHIVES 過去の記事アーカイブ