新・週刊フジテレビ批評

The 批評対談

特別企画 バラエティに未来はあるか〜後編

DATE : 2015.08.29(土)

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前回に引き続き、各局で様々な人気番組を担当する三人の放送作家を迎え、様々な議論を呼んでいるテレビのバラエティ番組、その現在と未来について聞いた。

バラエティ番組への視聴者の主な批判
@    似ている番組が多い。
A    “イジメ"に見える時がある。
B    内輪受け
C    番組枠の長時間化
D    おとなしくなった

@    〜Bについては<前編>でお伝えしたので、今回はC以降のテーマについて議論が始まって。
番組枠の長時間化に対して伊藤氏は、「面白いものをやるために長くするのはいいが、視聴者の生理ではなく、視聴率や予算といったテレビ局の事情で長くなっている番組は確かに多い」と語った。高須氏も「原因はほとんど視聴率のため。裏番組の乗り変わりの時に、チャンネルタイミングで視聴者を離さないため、つまり視聴者にチャンネルを変えさせないため。こういった“またぎ"のために番組が長くなっている」と分析した。さらに樋口氏も、「視聴率を目標にするとそういうことが起こる。目的があって長くする番組は録画して後でじっくり見ようということになる。だからいい番組ほど録画され、結果、視聴率は悪くなる」と述べた。また、「昔は本当にスペシャルな内容の時しか枠の拡大はなかった」という樋口氏に、伊藤氏も「人間が集中して見ていられる時間の生理を無視して作られている番組は確かにある」と賛同した。
さらに伊藤氏は、「視聴者の側に短いものが見やすいという意識が進んでいるのは確か。反面、短い時間では伝えられないものも確実にある。そこで戦っていく努力は必要だ。世の中が短くなっているからといって、短いものばかりになってしまったらやはり伝わらないものができてしまう」と訴えた。高須氏もまた、「見てくれた人の満足度を高めるために、フリを長くするのは必要。しかしそういうホームランではなくて小さなヒット狙いになると、結局は番組が先細りになり、人気低下に繋がることもある」と述べた。
一方で、長時間化とは別に、番組放送の長期間化という現象もある。「企画は絶対に一周してしまう」と述べた高須氏は、『めちゃイケ』の出演者・加藤浩次を例に挙げ、長期間化によって、他番組への別キャラでの出演が増えたために、番組内のキャラクターが分からなくなり、結果視聴者を混乱させてしまうという現象を説明。「長くやっている番組はそういうことが起こりやすくなり、企画も通りづらくなってくる」と述べた。
伊藤氏もまた、「最初は新鮮だったものが、長くやっているうちに他所にも真似され、やがてはオーソドックスなもの、スタンダードになってしまう。消費されるスピードが速くなっている中で、変わり続けていかないと難しくなる」と語った。

視聴率至上主義になると、今まで視聴率が獲れていたものを守るという姿勢になってくる。これが『テレビがおとなしくなった』と見られる原因の一つ、と述べる高須氏。「かつてのバラエティは、番組間でも出演者間でもどんどん下剋上をやってきた。既成の番組と違う物を作ろうとする姿勢。上の世代の人気タレントに対抗する出演者。みんな先人の作ったものを否定し、そこに逃げ込まないために自分たちで新しいものを作らなくちゃいけない、という思いでやってきていた。出演者同士だけでなく、制作者の中にもそういう“ケンカ"があった。今はみんなが仲良くなりすぎている」と持論を展開した。
樋口氏も賛同し、「昔は裏番組が全部失敗してくれないかと思っていた。今は逆に、わざと裏番組の良いところを“尊敬"するように意識を変えている。マインドは全く一緒だが、アウトプットをちょっと変えた」と語った。
三人とも他の作家と番組を意識していたというが、伊藤氏も「ディレクターも、もっとバチバチしてもいいんじゃないか、と感じる。昔と違ってみんなあんまりケンカしなくなってるから、上の方が強くなっているというのは、フジテレビでもあると思う」と述べた。

課題が多い中でも、今、受けている番組は確実にある。ここで三人のゲストそれぞれに、今、面白いと思うバラエティ番組を聞いてみた。
まずテレビ朝日『しくじり先生』を挙げたのは伊藤氏。「タレントが自らのプライベートを語る番組は多いが、マイナスをちゃんとプラスにまで持っていき、本人も楽しそうに見える。視聴者にとっても出演者にとってもみんなに“やさしい"番組。悔しいくらい良くできている」と絶賛した。一時期大成功したものの、今、失敗している人を持ち上げる予定調和ではなく、自分がダメだったということをプレゼンさせて開き直るというところで、一周した結果、“やさしさ"になる。テレビ的予定調和を崩しているという事が新しいコンテンツの見せ方となってくるのかもしれない。
高須氏はテレビ朝日『キリトルTV』とTBS『水曜日のダウンタウン』を挙げ、「『キリトルTV』はスポーツ選手がマイクのないところで何をしゃべっているかを見せてくれた。スポーツのシーンがあれだけで見方がまったく変わるのはすごい“発明"だなと思う」と絶賛。また自ら手掛ける『水曜日のダウンタウン』に関しては、「演出家がすごくある意味挑戦的で、ネタに関しても“くだらないものだけでいい"という潔さがすごく番組として楽しい」と語った。
フジテレビ『ヨルタモリ』を挙げた樋口氏は、「この番組は、今ある常識を全部やめるところから始まった。テロップもなく、今やっている事を全部排除している。それとやっぱり、自分が見たいテレビに近くなってきているのが面白い」と述べた。さらに「タモリという才能が一番生きる番組は、テロップやあおりじゃない。『お酒以外はすべてウソ』というタモリの名言をコンセプトとし、そこから絶対にルール違反しないようにして作った結果があの番組だった」と語った。

最後に、今後どういうことをしていくべきか、という質問に対して、伊藤氏は、「どんどん変わっていく最中なので、自分も新人のつもりでやっていかないと。テレビ界の常識も全部忘れてがんばっていこうと思う」と述べた。また高須氏は、「バラエティもドラマのように1クールで終わってもいいと思う。そうすればもっとカジュアルにいろいろなことを試せるようになるかもしれない」と提案した。樋口氏は「似たような番組でも、1ミリでもいいからそこにちょっと面白さを加えていくという努力が必要。フジテレビの荒井昭博さん(元バラエティ番組プロデューサー)に言われた『コピペ、1チャレンジ』という、『コピペでもいいから1個だけチャレンジしろよ』という言葉がある。そういう番組も大事だなと思う」と語った。

2回にわたる対談を終えたコメンテーターの速水健朗氏は、
「テレビのバラエティがあまりにも王様になりすぎているところで、逆に王様になる時代を作ってきた人たちが、『王様じゃないから面白いんだよ』という考え方ができているというのが非常に驚きだったし、今後期待できるところだなと思った」とコメントした。
 



GUEST
伊藤正宏 放送作家
高須光聖 放送作家
樋口卓治 放送作家

COMMENTATOR
速水健朗 編集者・ライター





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