新・週刊フジテレビ批評

クリティックトーク

68年目の記憶 戦争の悲劇を伝え継ぐために

DATE : 2013.08.17(土)

CATEGORIES : | Critique TALK |

漫画家のちばてつや氏は、終戦時に旧満州、中国東北部にいてその後、過酷な引き揚げを体験した。そのため戦争の記憶を伝えるため様々な活動を続けている。
ちば氏は「毎年、8月15日になり、蟬の声を聞いたり、夏のギラギラした日差しを見ると、あの終戦の日を思い出す」と終戦の日を迎えた気持ちを語り、そして当時、8月15日の状況を話し始めた。
「当時は6歳。父親の仕事の関係で(中国東北部の都市)にいた。父が働く印刷工場の社宅の庭にいた。すると、突然、日本人だけ召集がかかった。所長の家に皆が集まった。自分は家の前で遊んでいたら、大人たちが出てきた。皆、真っ青な顔をして、泣いている人もいた。中で玉音放送を聞いたのだろう。現実的に日本が戦争に負けたと知って、さあどうしたものかと思い出てきたのだろう。日本が戦争に負けたと先に中国の人は感じていたのか、数日前から日本人が暮らす地区の外は騒がしかった」
それから引き揚げが始まるのだが、当初は、負けたと分かっても移動の手段もなく、どうしていいか分からなかったという。
「中国や朝鮮の人、それまで日本人に鬱屈した気持ちを持っていた人たちの気持ちが爆発したのだろう。高い塀を乗り越えてガラスを割ったりと暴動になった。現実に目の前で見て、すごく怖かった」
当時、ちば家は6人家族。ちばてつや氏が長男で6歳、次男が4歳 三男が3歳と四男は生まれたばかりと父母だった。一家はしばらくどうしていいか分からずにいたが、毎日のように暴動が起こり、家の中に閉じこもっていた。冬になると社宅にはいられなくなり、脱出が始まる。
「暴動でいろんなものが持って行かれている。ここには住めないということになり、ある晩、夜中の12時に皆で社宅を出た。貯金通帳とかアルバムとか
持ち、これから寒くなると、コートから何からありったけのものを着せられた。重くて暑く、リュックを背負わされ真っ黒な中を避難した。まず安全な所ということでまず警察へ行ったら、そこが一番危ない場所だった。恨みを買っていて、ガラスも全部割られ、真っ暗だった。それから日本の工場などに隠れていた」
ちばさんは、日本に引き揚げるまでにたくさんの人が亡くなるのを見た。
「道を歩いていると力尽きていろんな人が倒れていた。まず食料が尽きた。飢えで苦しみだした。逃げ回っているときに子供が泣いたりすると日本人がいると分かってしまう。泣かせるなと言われ慌てて口を抑えて窒息させたりした。当時の中国人には日本人の子供は賢いという思いがあったらしく日本子供を欲しがった。食料をあげるから子供頂戴と言われ、交換している現場も見た」と当時、引き揚げで見た日本人の過酷な状況を語り、その経験がその後の漫画家人生に及ぼした影響についても話した。
「逃げてくる途中に避難する集団とはぐれて家族六人になってしまった、その時、父の親友の中国人に出会い、屋根裏に匿われた。その時に弟たちは退屈ですぐに泣いた。そこに潜んでいるとバレてしまう。何とか退屈させないために絵を書いた。弟たちがすごく喜んでくれた。私が漫画家になった原点みたいなものがそこにある」
「できるだけ引揚者であることや引き揚げの事を話さないようにしていたが、
どうしてもどっかで傷が開く。漫画家だから読んだら元気になる、癒されるというのも書こうと思うのだが、どこかでチラッと人の生死を間近に見た、いろんな人がたったひと冬の間にいろんな人が亡くなったのを見たことの影響が、どうしても作品のどこかでフッと出てしまう」
やがてちば氏は、漫画家の中に同じような引き上げ体験者がいることを知った。
「絵でもイラストでもいいから残しておこうよ、ということで、特に漫画を残そうと展覧会を開き、そこから始まった」と自らの戦争を伝える活動の原点を明かし締めくくった。


■ゲスト
ちばてつや(漫画家)
■プロフィール
1939年(昭和14年)1月11日、東京生まれ
同年11月に朝鮮半島を経て、1941年1月旧満州・奉天(現中国・遼寧省瀋陽)に渡る。
1945年 同地で終戦を迎え、敗戦に伴い、暴動や略奪などが相次ぐ混乱の中、父の同僚の中国人に助けられ、屋根裏部屋にかくまわれるなど苦労を重ねた。翌年、家族で、日本に引き上げを果たす。
1956年、単行本作品でプロデビュー。1958年「ママのバイオリン」で雑誌連載開始
1961年「ちかいの魔球」で週間少年誌にデビュー。
引き上げ体験を漫画にするなど、戦争体験を語り継ぐ活動を続けている
2001年 文部科学大臣賞受賞 2002年紫綬褒章受賞
主な作品に「1・2・3と4・5・ロク」、「ユキの太陽」、「紫電改のタカ」、「ハリスの旋風」、「みそっかす」、「あしたのジョー」、「おれは鉄兵」、「あした天気になあれ」、「のたり松太郎」など。
社団法人日本漫画家協会常務理事。

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