新・週刊フジテレビ批評

クリティックトーク

『ニコニコ動画』とコンテンツビジネスの未来

DATE : 2012.08.25(土)

CATEGORIES : | Critique TALK |

放送前に行った『ニコニコ生放送』での「フジテレビ批評×批評」の8回目の配信について、川上氏は、「すごい新鮮。というか、この番組は面白い。前のコーナーで、佐藤秀峰さんの『ブラックジャックによろしく』の話題が流れていたが、そういうのがテレビでやることにビックリした。」と話した。

 4月に開催し9万人の参加者を集めた「ニコニコ超会議」について、川上氏は「ネットのいろんなイベントをネットの中では盛り上がっているが、リアルな世界ではなかなか認めてもらえないので、実際に集めてみたら世の中ももっと理解してもらえるのではないかと思って始めたイベント。若い人が多いというのは、特にネットは年をとるとリアルなイベントに行きたがらないから。」と話した。

 この「超会議」のイベントで出た約4億7000万円の赤字について、川上氏は「あんなに出るとは思わなかった。2億円ぐらいまでは覚悟していたが、全然それどころではなかった。大体そんな感じで、杜撰な計画でやっている会社。今までネットとリアルを繋げたイベントというのが、あまりなかったので1回目はどんなに赤字が出ても元は取れると思っていた。2回目以降は、もう少し抑えめにしようと思う。」と語った。

 津田氏は「『ニコニコ超会議』の中の"言論ブース"という『ニコニコ生放送』の番組に出る人たちが出演するブースがあって、そこでいくつかの番組の司会などをやっていて、楽しかった。面白かったのは、どうしても若い子が多いというのもあるが、お金を払う有料のブースと無料のブースがあるが、チケットを買わなくても入れる無料の方が豪華。有料の方が結構しょぼかったりするが、でも盛り上がっているみたいな、その辺もネットっぽくてちょっとDIY(手作り)な感じがしていて面白かった。」と語った。

 川上氏は「奥の方に行くと、『踊ってみた』ブースとかがあるが、『踊ってみた』って単なる空き地。人が入らなかったらもうどうしようもない場所だった。」と話した。

 若者に人気だという『ニコニコ動画』の年代別シェアをみると、10代が
18.1%、20代が42.7%で、10代・20代だけで6割を超えている。さらに、20代の人口の約89%が会員だという。このデータについて、川上氏は「本当ではないと思う。実際にはもう少し低いと思う。でも、もうすぐ100%を超える。二重にカウントしている人もいるから。たぶん、若い世代でパソコンでインターネットをしている人は特にほぼ『ニコニコ動画』は使っていると思う。」と話した。

今月21日に発表された「ニコニコ動画」の新サービスについて、川上氏は「技術的には全く特徴のないサービスだが、中身はかなり特徴的だと信じている。2つポイントがあって、1つはネットでお金をとれるプラットフォームだということ。2つめがコンテンツとファンの間を繋げるツールになっているところがポイントだと思う。今あるネットのプラットフォームは、例えばアップルもアマゾンも欠点はコンテンツが汎用品のように並べられていること。いろんな小説でも漫画でもアニメでも映画でも、何か好きなものがあったとしたら、その好きなものはかけがえのないもの。例えば、ドラゴンクエストとFINAL FANTASYは似ているようで違うもの。それがRPGだというジャンルで、どっちでも構わないというお客もいるが、そうじゃないお客もいて、そこがネットでショップになってしまうと、それが同じもののように扱われてしまう。それが、この『ブロマガ』という仕組みを使うと、一旦使ってしまったら終わりというものではなくて、永続的にコンテンツとユーザーを繋ぐことができる。そういうプラットフォーム。」と語った。

この『ブロマガ』に参加している津田氏は、「フリーが10年以上で長いが、フリーでやっているとギャラなどのお金が受動的になるというか、10年前ぐらいまでインターネットやIT系の雑誌のライターだった。16誌ぐらいあったインターネットの雑誌の中の12誌ぐらいに記事を書いていた。今はその雑誌はどれない。全部廃刊になって、生き方を変えなくてならなかったり、つい最近でいうと、テレビに出させてもらってしゃべらせてもらう機会も増えたが、今度の10月の改編でレギュラーが1本なくなるみたいなことが普通に起きてしまうので、そういうときにただ僕が発信している情報に興味がある人に対して、直接いろんなところからお金を取るということができると活動の幅も広がるし、ベースを作るという意味で、『ブロマガ』みたいなサービスが出てくることで、すごく活動がやりやすくなると期待している。」と話した。

「ネットはタダ」と考える人も多い中、ネットでの課金ということについて、川上は「全部がタダという考え方は間違っていると思う。今のインターネットの無料というものは、現実社会で有料なものをネットを通じて無料でコピーするというもので、それってリアルな世界でビジネスがあるから成り立っているので、それがなかったら成立しない。それが、どこかのタイミングでネットでもお金が稼げる仕組みができないと、やはりコンテンツそのものが世の中から消えてしまう。ネットでも課金されるような局面はきっと来ると思う。」と話した。

    津田氏は「インターネットのサービスはなかなかユーザーがお金を払わないというのが今までの特徴だったと思う。『ニコニコ動画』の場合、170万人ほど毎月500円を払っているユーザーがいるが、なぜこんなにスムーズにお金を払ってくれていると分析しているのか。」と川上氏に尋ねた。

川上氏は「基本は習慣の問題だと思う。ものの値段なんてあってないようなものだから、何が相場なのかと言ったら、何となく値段を見て、世の中のものを見て判断するしかない。そうするとタダのものはあるんだったらやはりタダが正しい値段かなとどうしても思ってしまう。だから『ニコニコ動画』に500円をどうしたら払ってくれるのかと考えたら、比べられないようにしようということでサービスの設計を作った。何だかよくわかんないから払っちゃえというのを狙って作った。目的がわかっていてお金を払っているものはビジネスにならないと思っている。よくわかんないからお金を払っているビジネスというのが世の中を見ても儲かっているビジネスは大体そういうもの。面白いから見続けるということは必要だが、いくら面白くてもユーザーは相場と思っているお金しか払わない。」と答えた。

津田氏は「もう一つ気になるのが、動画というとある意味でテレビとも似ているもの。テレビというのは広告主からお金をとって、地上波は無料で見せるということをやっているが、テレビのビジネスモデルや、テレビのネット進出を頑張ってやろうとしているが、今ひとつうまくいけているところといけてないところがあるというのは、川上さんから見て、今のテレビというのはどういうふうに映っているのか。」と川上氏に尋ねた。
   
川上氏は「ネットの世界のビジネスモデルというのは変わったものが多いが、やはりテレビが広告収入だけやっていること自体がどう考えても最初に始めた人はすごいなと思う。ただ、コンテンツモデルというのは、映像コンテンツはお金がかかるので、それを広告モデルでネットで成立するのは無理だと思っている。」と答えた。

津田氏がニコニコ生放送でのユーザーからのコメントを紹介し、「西山さんの写真集のアプリを出せば良いじゃないかというコメントがあった。喜久ちゃんなら1000円出します!という意見も。」と言うと、西山アナウンサーは、「今回の『お台場合衆国』のイベント内で、『ニコニコ神社』で実際に自分の映像が映っていてユーザーと直接会話をしたが、すごく面白かった。双方向というのを出演者として実体験した。それをテレビでうまく活用できなものかと思った。」と話した。
   
川上氏は「双方向のテレビは今後出てくると思う。やはり面白い。」と話すと、津田氏は「双方向にプラスして、リアルタイムというのが重要で、例えば、今こうして話した5分後、10分後にネットだったら西山さんの写真100円で売りますとか言うと、結構今のこのノリでみんな買ったりする。多分、ネットの機動性の高さみたいなものとかがやはりすごく重要で、『ニコニコ生放送』でも今日その場で話題になったネットの話題が夜に特番を組んだりする。ここがまたテレビの報道とは違うフットワークの軽さというのが、ネットユーザーにとってはすごくリアリティがあったりとか、興味を惹きつけているのかなと思う。」と語った。

川上氏は「リアルタイムで繋がるということに関して言えば、テレビの方がたくさんの人と繋がれるので、一緒に見ているという感覚というのの効果というのはテレビの方がむしろネットよりも高いと思う。例えばネットでもジブリの映画は、毎回放送される度に人気がある。それはやはりテレビのコンテンツだからできる話題の広がり。」と話した。
   
津田氏は「さっき川上さんが言ったのは、あまり考えさせないでというのは、たぶんネットはノリが大事というか、ネットショッピングでもクリックするのがたくさん多くなればなるほどみんな買わなくなっている。ワンクリックで買えてしまうと買ってしまうというような。考えさせないうちにお金を払わせるみたいなものを設計するとお金に替わっていく、導線がどんどん増えていく。」と話した。
   
川上氏は「なんだかんだ言ってもみんな新しいことに保守的なので、慣れるというか、時間が解決するということが多いと思う。日本全体が保守的なので、テレビの人と会うとその中で革新的な人が多いと思う。それは何故かというとコンテンツを作っているからだと思う。コンテンツそのものというのは、常に新鮮。ずっと同じものばかり作っているのとやはり違うので、指向性の問題はあると思うが、クリエイティブな人たちは多いと思う。」と話した。
   
津田氏が再びネットユーザーからのコメントを紹介、「『じゃあ、テレビで何か新しいことあるの?』という質問があったが、たぶんテレビの新しさというもの自体がまた再定義しなくてはいけないというか、テレビを見ていたときに恐らく今までだったらこういうふうにコメントと組み合わさって見ることで新しさが生まれるということもそうだろうし、例えばTwitterを見ていてまったく興味がなかったけど、自分の興味のある人が『こんな番組面白いよ』と言うのでつけてみて『あっこれ面白い!』って思いながら、それでまたTwitterで書いて、それでまた話題が広がっていくみたいな、テレビというのは話題の最初の起点になっているというやはりその話題の起点力の強さみたいなものはすごくあると思う。」と話した。
   
川上氏は「大体ネットでも長いことやっていると批判されるので、それだけ歴史が長い分だけテレビは批判されるというだけのこと。」と話した。


■ゲスト
川上量生(かわかみのぶお) ドワンゴ代表取締役会長
■プロフィール
1968年、愛媛県生まれ。京都大学工学部卒業後、ソフトウエア専門の商社勤務を経て、1997年に株式会社ドワンゴを設立。当初はオンラインゲームを中心とした事業をしていたが、携帯電話向けサービス「いろメロミックス」など着メロ事業がヒット。2006年12月には「ニコニコ動画」をサービス開始し、登録会員数は現在2800万人を超える。
2011年1月からはスタジオジブリに入社し,プロデューサー見習いとして鈴木敏夫氏に師事している。

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