新・週刊フジテレビ批評

クリティックトーク

地デジ移行 残された課題

DATE : 2011.07.16(土)

CATEGORIES : | Critique TALK |

編集長を務めるメディア研究誌「放送レポート」の誌面で、何度も地デジ化政策に対して延期論などの批判的な論調を展開してきた岩崎氏。
地デジ移行があと8日後に迫り、これまでの地デジ化の流れに対して現在の率直な心境は、「テレビは、一般の視聴者が自分のお金でテレビとアンテナを買って備えてくれないと成り立たないシステム。その人たちに期限を区切ってここまでにデジタル化してくれということになると、非常に労力と時間がかかる。そこに無理がなかったか、検証されるべきだと思っている。それだけ人々にとってテレビは身近で、ライフラインとしても娯楽の道具としても欠かせない存在だということ。ここから先はもう頑張るしかないということで、デジサポのみなさんも大変努力されていることに心から敬意を払いたいが、まだ残っている課題もあると考えている。」と語った。課題の1つ目は、「まだ完全移行とは言い切れないということ。被災地の東北三県が残されているということもあるが、ケーブルテレビのアナログ・デジタル変換で見ている人はまだアナログテレビのまま。それと地上波でもケーブールでも届かない方のために衛星放送を使って地上波を流す『衛星セーフティネット』で見ている人。この方たちも一定の期限はありながらアナログのままなので、いつごろ地デジに切り替えられるのか。先送りして課題を残したまま。」と語った。
2つ目は、「デジタル化は画像が良くなるだけでなく、少ない帯域で情報を伝えられるので、電波の効率的な利用という利点がある。今回の地上放送デジタル化はVHF帯を空けてUHF帯に移行させるので、空いた周波数をどう利用するのかということがある。」と語った。
アナログ放送の時はVHF帯を使っていた放送局もUHF帯を使っていた局も、地デジではすべてUHF帯に移行する。「もし早く俺に使わせてくれ、という人がたくさんいるのであれば、急いでデジタル化することも理屈としてわかるが、計画では携帯端末向けのマルチメディア放送というものが用意されて、一部はやりますという事業社も決まっているが、実態としてはかなりの部分で具体的にどういう使い方をするのか決まっていない。どういう端末で、携帯電話なのかそれとも全く別のものなのか、まだ全然はっきりしていない。急いで空けたものの、あけっ放しでどうしよう、ということになりかねない。政府が主導でやるべきなのかという議論もあると思うが、計画みたいなものがもっとあっていいはず」。
そして3つ目の課題は、「10年間『地デジ化』でやってきたが、地デジ化を巡りどういう問題があり、どういう課題があるのかというのは、残念ながらテレビの放送で、あまり議論が見られなかった。7月24日を機会に地デジ化するが、私はまだこれで地デジ化が終わったとは思わないので、この10年間の地デジ化の進め方、地上波のあり方なども含めて、テレビが自ら振り返って、検証し、発表したほうがいいと思う。この10年間は、特にインターネットの普及が大きいのと、携帯電話の進化。スマートフォンで動画も見られるようになった」と語った。
こうした激動の中で、稲増氏は、「確かに通信やテクノロジーの進化は速い。しかし、全部プランが出来たから地デジに移行できるというものでもない。(周波数の)空地が出来て初めてプランを出せるというのもあるので、これからもテクノロジーは進化していくので、(制度と)常に追いつけ追い越せみたいな世界。地デジ化は、もうやるしかない。」と語った。
続いて、地デジ移行後のテレビが目指す方向性について、岩崎氏は「もともとデジタル放送に魅力があるということだったら、放っておいても皆こぞってデジタル化するはず。例えばLPレコードがCDになった時に劇的に変わった。ところが、地デジでは地デジならではの魅力みたいなものがうまく伝えきれなかった。アナログテレビに大きい字幕をかけて、もう終わりますよとやらないと伝わっていかないのは、本質的に地デジが魅力ある媒体になっているかという部分が問われているのではないか。」と語った。
稲増氏は「地デジで画質はよくなっていても操作性は違わないので画期的な感じがしない。ただ世界の潮流から言っても、日本だけ地デジ化せず遅れてしまうといろんな意味での技術が遅れてしまうことも考えなければならない。」と語った。
岩崎氏は、「電波の有効利用に関してこれから目指す方向性ということでいえば、効率的に使えるということは多くの人が利用できるということで、例えば市民が番組を作って放送するということもできる。今までの放送よりもっとイメージを広げた放送が、デジタル放送なら実現できる。小型のカメラでも画質のいい映像が作れる時代、いろんな放送が考えていけると思う。」と語った。
ネットが進化したことで、自分で映像を作り放送していくという感覚も身近になっていることを踏まえて、稲増氏は「Ustreamなど、新しい放送の形がある。我々が考える以上にテクノロジーが進んでいき、そのテクノロジーに対してユーザーが新しい使い方をどんどんトライしていくというのがある。ケータイがこんな風に使われるとは昔なら想像もつかないこと。その辺は、逆に今後に期待したい」と語った。
空いた周波数のガイドラインに関して、岩崎氏は、「もともと電波は免許制だから、広がったとはいえ限られた人しか使えない。ちゃんとできるという事業社が利用していく中で、事業社がどんな使い方をするかという可能性は開かれている。」と語った。
これまで番組を作り続けてきたテレビ局だからこそできることはあるのか、ということに関しては、「インターネットとの関係でいうと、『ネットメディアに席巻されてテレビは終わりじゃないか』と言われるが、『喰うか喰われるか』という敵対関係ではなく、いろんな出口の一つとしてテレビやネットがあるという捉え方で進めるといいと思う。それと番組でいえば、テレビの魅力はこんなバカバカしいことにものすごい情熱をかけているということがある。これはやはり一般の人はおいそれとは作れないので、責任を持っていい娯楽を作るのはずっと期待されていることだと思う。」と語った。
さらに地震後に関しては、「情報に関する感度が高まっており、報道への期待も高まっている。ネットの時代になると信頼性が問われるので、自分の出している情報のニュースソースがどこにあるのか、これまで以上に意識して明示し、視聴者の信頼を得るということがますます求められる。」と語った。
これに対し稲増氏は、「かつてはすべてをやるのがテレビだったが、そうではなくなってきて、ネットと一緒にやっていく部分と、あるいはテレビでないとやれないものを作っていく部分と、そういう分業が進むのではないか。」と語った。


● ゲスト
岩崎 貞明(いわさき・さだあき)
● プロフィール
1963年東京生まれ。1986年テレビ朝日入社。報道局社会部記者・デスク、
『ザ・スクープ』ディレクター、『スーパーJチャンネル』ニュースデスク等を経て、2001年よりメディア総合研究所事務局長、『放送レポート』編集長。
共著書に『放送法を読みとく』『キーワードで読み解く現代のジャーナリズム』など。立教大学・専修大学で非常勤講師も務める。

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