新・週刊フジテレビ批評

クリティックトーク

原発報道 テレビはどう伝えているか

DATE : 2011.03.26(土)

CATEGORIES : | Critique TALK |

今回の原発事故では自身のTwitterでも科学的な視点を入れつつ、一歩引いた目線で分かり易く発信をし続けていた松浦氏。今のテレビの伝え方について、『機械はどこの配管がどう繋がっているのか、どういう機能があるかとか、良く見ると読める。私の専門であるロケットエンジンは配管の塊で、あれは機械としてみるとプラント。そういう意味では原子力発電所に繋がるところがある。記者会見の現場にあまり専門知識を持っている人が来ていない。説明する東京電力側も、記者もよくわかっていない、分かっていない者同士がごちゃごちゃやっているという印象がある。』と話した。
今回の原発報道をについて、松野氏は「冷却する部分が津波で破壊されて動かないということで、かなり早い段階から危ないことになるかもと聞いていた。想定外だから、情報を開示するのもやっぱり後手後手になってしまった。後にかなり情報が出てくるようになったが、今度は断片的な情報がどんどん出てくるようになって、全体的にどうなっているのかが分からなくなってきた。逆に外国の新聞等を見た方が構造がよくわかったりする状況になってきている。」と話した。
ネットの伝え方について、津田氏は「多分、テレビの報道で一番分からないのは、『ヨウ素が一万倍』とか見出しの分かり易さを重視して数字を出している所だと思う。百倍だけど問題ない場合もあれば、重篤な事態かもしれない事が分からない。そういったテレビの分かり易さを重視したタイトルに対して、実際それを読み解くにはどうすればいいのか、という所はTwitterで原子力などの専門家が答えていた。それである程度情報の混乱が防げていたという部分がある。」と語った。松浦氏は、「ネットの特徴は、色々な人が参加する事で、社会そのものになっている。その中には、必ず自分よりも良く分かっている専門家がいる。今回も、元東芝で実際に1960年代に原子炉を設計した方がネットで話してくれたり、あるいは東京大学の早野龍五教授のような方が出てきて情報を整理してくれる。今までメディアや政府が出していた公式発表とは別に、より整理された専門家の情報が自発的に組織化されて出てきている。その背景には、東京電力の最初の記者会見で、本当に何をやってるのか良く分からない、おそらく記者会見に出ている側もよく掴んでなかったという状況があった。」と語った。津田氏は「マスメディアも速報性を重視し過ぎてしまって、落ち着いて情報を出すよりも他局よりも早く出すという方を重視していたというのはある。」と話した。松野氏は「各局ガイドラインがあって報道によって風評被害の加害者になってはいけないという鉄則がある。バランスが非常に難しい」と語った。
そして松浦氏は「今回の情報の流れ方でまずいと思ったのは"当面大丈夫です"ということばかりが先行している事。最悪の状態を考えて、そこから今どれくらいですよ、という情報が必要なのだが、そこが無かった。多分最悪の状態を流すとみんなパニックになるからというのがあったと思うが、実はそこをちゃんと伝えなくてはならない。今回の最悪の状態というのは『炉心が露出して核燃料が飛散する』ということ。そうすると例えば周りの土地が使えなくなるという話になっていく。そこに至るまでに後どれくらい大丈夫か、という報道が無かった。最悪の状態を伝える時に、冷静に受け止めてもらえるようにするのは、ネットの役割だと思う。今回、ネットは意外と情報の間違いが広がりにくく、何かあったら必ず抑制が利くというのが分かった。」と語った。テレビができる役割について、松浦氏は『基本はリテラシーの向上。この情報をどう理解するかという枠組みを持つ。『絶対安全』というのはまずなく、現状がどうかが常にあるわけで、そこをどう伝えていくのかということ。技術の話ははっきり分かる。分かる所から詰めていけば、はっきり詰められない政治や利権などが逆にはっきり見えてくる筈だ。』と語った。松野氏は「今一番知りたいのは、どこまでいけば『終息宣言』がされるのかということ。それが全然無い。放射能のモニタリングの場所も原子力関係だけじゃなくていろんな人がやってネットとテレビ両方で情報をまとめたほうがいい。」と話した。津田氏は、「メディアの人が会見で『最悪の事態は?』と聞くと、みんな言葉を濁すだけで非常に画一的な情報になっている。それに対して最悪の事態を想定し、次、何が起きるのかという所をテレビの報道が冷静に伝え、一歩進むべきなのではないかと思う。」と述べた。


ゲスト:
松浦晋也
(まつうら・しんや)
科学ジャーナリスト。1962年東京都出身。
日経BP社記者として、宇宙開発などの取材経験を経て独立。ノンフィクション作家として主に航空宇宙分野で執筆活動を行っている。
著書に『国産ロケットはなぜ墜ちるのか』(日経BP社)、『恐るべき旅路』(朝日新聞社)『増補 スペースシャトルの落日』(ちくま文庫)などがある。

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