新・週刊フジテレビ批評

クリティックトーク

災害報道と被災者の”心のケア”

DATE : 2011.03.05(土)

CATEGORIES : | Critique TALK |

災害や事件後の日本人学校で子どもたちのカウンセリングを担当してきた小澤康司氏は、"心のケア"について、「災害や事件・事故に遭遇すると強いダメージを受けて、PTSDなどの精神的な障害を持つ事もあるし、それからの生活や人生が大きく変わっていく。そうした中でどう乗り越えていくかは、心理的な支えを必要とする。それを阪神淡路大震災以降、日本では "心のケア"と呼ぶようになってきた。周りの人たちが、対面して話を聞く中で被災者が精神的な落ち着きを取り戻し、安心できるような状態を作ってあげて、一緒に乗り越え、寄り添う事をしていくもの。」と話した。
今回のニュージーランド地震の被災者の支援体制については、「今回、日本から短期の語学留学で現地に行っていて、そこで被害に遭った人がいる。今現地が中心だが、そうした人への支援を日本に戻ってからの中長期の支援もしていかなきゃいけない。阪神淡路大震災が今なおケアを必要としている面もあるので、早急な現地の支援と中長期の支援両方をやる必要がある。」と語った。
これまでの地震報道について小澤氏は、「現地の状況に応じて取材が制限されている現状で、どう取材するかは課題がある。ただ、人道支援については報道の果たす役割は重要だ。一方で、どのような報道をすることがメッセージをどう伝えるのかという視点を持って伝えるのがいいのかと思った。今、人命救助も行われていて、そういう災害の中で、被災した人の人道支援をしている場面に遭遇している。私たちは心理的なサポートをする立場で関わるが、被災者の人がどんな心情で、どのような症状が起きていて、その時にどのような関わりをするのが必要かというのを取材する人もある程度理解して、被害者の負担にならないような在り方を考える必要がある。もう一つ、そのメッセージをどのように伝える事が視聴者に役立つのかを付加して伝えるのがいいと思った。」と話した。
コメンテーターの中央大・松野良一教授は、「これは各社のガイドラインにもあると思うが、鉄則があって、『災害報道にあたっては取材者は加害者になってはいけない』という原則がある。取材をしていると、現地でメディアスクラムとなって加熱し、取材競争になってしまう。その時に、誰のための報道なのかということを絶えず考えないとダメだ。本来の目的は原因や背景、さらにショックを受けたり、傷ついた人がどうやって立ち直っていくか、その"心のケア"も含めて、描いていく必要があるが、どうしても映像に走りがちになるところがある。それをどこかで戒めないとダメだ。」と話した。
小澤氏は、「災害に遭遇して、家族が亡くなったり、足を切断しなきゃいけないなどの状況の中で、その人たちが自分の気持ちも整理できないような心理的状態で、どういう励ましを必要としているかについて、もっと理解しておく必要があると思う。もう一つは、人間の心理として、自分が対処できないことには心理的に距離を置いて、近づこうとしない。こういった災害、事故に自分が対処できないような状況に対して、他人事と思ってしまうことで心の安定を図っている面もある。いざ自分がその状況になった時、自分が被害に遭った時に、どんな心境なんだろうかと、あまりにも考えていなかったり、対処の仕方を知らないというのが原因。被害者支援に入った時もそういう事を伝える事から"心のケア"の活動を始めるのだが、そういった事をもっと一般の人が知っていたり、報道の人ももう少し理解して対応するといいと思う。」と語った。
どこまで取材を続けていくかという点については、「実は阪神淡路大震災のケアが今も続いているように、人生をどう立て直していくかというところでは、非常に中長期の支援が必要。どうしても直後はみんな関心を持つが、時間が経ち、マスコミも撤退していく中で、多くの人が関心を持たなくなってしまう。やはり被害に遭った人の回復が非常に中長期に渡るものなので、その人たちをどうサポートしていくかということを考えていく必要があると思う。」と語った。


小澤 康司
(おざわやすじ)

立正大学心理学部教授
臨床心理士。海外日本人学校を対象とした学校臨床心理学の一人者で、1999年台湾大地震、2001年アメリカ同時多発テロ事件、2005年スマトラ島沖地震などの後に現地の日本人学校に文部科学省から派遣され、子どもたちのカウンセリングを担当。

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