第3章 神湊 8
宗像大社は、辺津宮(へつみや)・中津宮・沖津宮の3社から成っていて、宗像三女神を祭っている。宗像三女神とは天照大神(あまてらすおおみかみ)が素戔鳴尊(すさのおのみこと)と和解の誓約(うけい)をした時に生まれたという3人の女神で、宗像郡玄海町(現・宗像市)田島にある辺津宮は市杵嶋姫(いちきしまひめ)を、海上12kmの大島にある中津宮は湍津姫(たぎつひめ)を、大島からさらに海上50kmの沖ノ島にある沖津宮は田心姫(たごりひめ)をそれぞれ祀っている。須佐一行が訪れたのは、内陸部にある辺津宮こと宗像大社である。年毛神社からもそんなに遠くない。
「山上さん、宗像大社で私は何を取材すれば良いのでしょうか?」
「そうですね。神宝館を撮影するとよろしいでしょう」
「えっ、神宝館ですか? どんな宝物が納められているですか?」
「邪馬台国の謎を解くのに重要な鏡などが展示されています」
「鏡って、卑弥呼がもらった三角縁神獣鏡(さんかくぶちしんじゅうきょう)のことですか?」
「フフフ、それはどうかな」
須佐は山上の謎めいた笑いが気になって、もやもやした気分のまま宗像大社でロケをすることにした。ADの鈴木は、須佐の意向をくんで突然のロケ交渉に向かった。15分ぐらい経って鈴木がにこにこしながら戻って来た。
「須佐さん、取材のOKが取れました。ここの館長の桜井さんが快諾してくれました」
「ありがとう、良美ちゃん。じゃあ原田ちゃん準備お願いします」
須佐の言葉を待つまでもなく、原田たち技術スタッフはもう機材を降ろし始めていた。そして、一行は宗像大社神宝館へ向かった。
宗像大社は古くから海上安全・航海の守護神として知られている。遣唐使は航海の安全祈願のために必ず参拝したという。毎年10月1日には500隻の漁船が海上神幸する『みあれ祭』という壮大な海上パレードが行われている。また現在では地元の人々から交通安全の神様として深く崇拝されている。
広い境内の中には神宝館があり、沖ノ島学術調査で発見された発掘物がたくさん展示されている。また国宝に指定されたものも多く展示されており、量的にも質的にも展示物は充実している。急な取材を快く引き受けた桜井牧男館長が自ら須佐たちの応対にあたった。
「東京ベイテレビの須佐哲也と申します。突然の取材をご快諾いただいてありがとうございます。どうぞよろしくお願い致します」
須佐はそう言うと桜井館長と名刺交換をした。桜井館長の名刺には神宝館館長という肩書きと文学博士という博士号が印刷されていた。
「桜井さん、古代から沖ノ島やこの辺りは大陸や朝鮮半島と深い交流があったんですね」
「はい。沖ノ島・大島・神湊(こうのみなと)は海北道中(かいほくどうちゅう)と言って、朝鮮半島との航路だったのです。九州と朝鮮半島との中間ぐらいにある玄界灘の孤島の沖ノ島は、女性が渡ることができない女人禁制の『神の島』でもありました。そして沖ノ島にある沖津宮では、国家の安泰と航海の安全を祈って大和朝廷による重大な祭祀も行われていました。そんな沖ノ島から近年10万点にも及ぶ古代祭祀神宝が出土し、沖ノ島は『海の正倉院』とも呼ばれているのです。その出土物を展示しているのが宗像大社神宝館なのです」
桜井館長はいかにも学者だというような口調で須佐に説明をした。
「ということは神湊には、いにしえの昔から外国の船がやって来ていたのですか?」
「はい、そのように考えられます」
須佐は神湊が航海上でも重要な土地だと確認できて(急だったけど来て良かったなあ)と思った。
神宝館には古代の鏡もたくさん展示されていた。いろいろな鏡をまとめて陳列しているケースの前に来て須佐は尋ねた。
「桜井さん、これが三角縁神獣鏡ですか?」
「はい、卑弥呼が魏からもらった鏡とされているものです」
桜井館長は胸を張って答えた。その時、山上がまたしてもニヤッと笑ったのを須佐は見逃さなかった。それを見て須佐は(桜井館長と山上と一緒に鏡の前でリポートしよう)と思いついた。
「桜井さん、急で申し訳ないのですが、私のインタビューに答えていただけませんでしょうか?」
須佐の申し出に桜井館長はびっくりして言った。
「えっ、インタビューを撮影するのですか? じゃあ、ちょっと待っていて下さい」
桜井はそそくさと館長室へ戻った。その姿を見届け、山上が口を開いた。
「須佐さん、私にも鏡のことをしゃべらせて下さい」
「ええ、もちろんですとも」
山上の申し出は須佐の思惑通りだった。 






清水淳司 | 2010年01月27日(水) 10:42
「邪馬台国」を3Dにしたらいいと思うのですが。
無理なのでしょうか。
「魏志倭人伝」を3D したら世界初だと思いますが。
コロコロ | 2010年01月25日(月) 01:04
興味しんしん・・・・
トム | 2010年01月24日(日) 18:52
楽しみです。
久美 | 2010年01月23日(土) 01:00
即ち、沖津宮所蔵品だった?、または沖ノ島発掘品?
本家本元の中国では出土しなくて、日本で多数出土の三角縁神獣鏡の事??
他にも中国製の鏡がザクザク出てくるのかなーー?
そういえば、
「宗像」は何故「ムナカタ」と読むのだろう?
「宗形」・「胸形」・「胸肩」ならばムネ⇒ムナで読めるが・・・。
世界遺産の安芸の宮島、厳島神社も宗像三女神を祀っていますね。
是空 | 2010年01月22日(金) 18:40
ようやく宗像大社にたどり着いた。
でも、これからが重要な謎解きがあるのだと思うとワクワクします。
「卑弥呼の金印を捜せ」のDVD化の署名しましたよ。
読者の皆さん署名運動に協力してくださ〜い。
還暦 | 2010年01月22日(金) 17:33